生き物の種類によって「暑い」「寒い」と感じる温度が違うのは、主にその生物の体の構造や環境への適応の違いによるものです。詳しく解説します。

### 1. 生物の体温調節の違い:恒温動物と変温動物

- **恒温動物(内温動物)**:ヒトや哺乳類、鳥類など。体温を一定に保とうとする能力があります。このため、彼らは外気温にかかわらず、例えばヒトであれば約37℃前後の体温を保ちます。なので、「暑い」「寒い」と感じる温度範囲はこの体温に基づいています。

- **変温動物(外温動物)**:爬虫類や両生類、魚類など。外気温の影響を受けやすく、体温が周囲温度に近づきます。そのため、彼らの体感温度は環境の温度に大きく左右されます。

### 2. 温度感知の仕組みの分子レベルの違い

- 生物は皮膚や感覚器官にある**TRPチャネル**(温度感覚受容体)を使って温度を感じています。このTRPチャネルは、生物の種類や環境に応じて感度や反応する温度域が異なります。

- 例えば、哺乳類のTRPV3チャネルは暖かい温度(約33-39℃)で活性化しますが、ニシツメガエル(両生類)の同じTRPV3チャネルは低温(16℃以下)で活性化し、逆に冷たさを感じる仕組みとなっています。

- この違いはTRPチャネルのタンパク質のアミノ酸配列の変化により生じ、生物の進化の過程で環境適応に応じて変わってきました[1]。

### 3. 体温や発汗などの生理的違い

- 例えば犬はヒトより体温が2〜3℃高く(約38.5〜39℃)、汗もほとんどかかないため、体感温度はヒトと異なります。犬にとってヒトが「暑い」と感じる温度はさらに高く、体熱の放散が難しいことからより暑さを感じやすいです[2][9]。

- また、体の大きさや表面積、被毛の有無も温度感じ方に影響します。地面に近い動物は地熱の影響も加わりやすいです。

### 4. 神経系と触覚の違い

- 温度感覚は感覚神経を介して脳に伝えられますが、その神経系の発達度合いや神経の種類も種によって異なり、温度感受性や体感温度の感じ方に差が出ます[3][5][8]。

### 5. 生息環境の影響

- 砂漠や熱帯、寒冷地などの厳しい環境に適応するために、その地域の生物はその環境に最適な温度感受性を持つよう進化しています。

- 進化的にはTRPチャネルの機能変化「モーダルシフト」と呼ばれる現象があり、同じ種類の分子でも生息環境に応じて全く異なる温度感覚を持つ例が見られます[1]。

### まとめ

- 「暑い」「寒い」と感じる温度は生物の**恒温性の有無、体温、温度感受性タンパク質(TRPチャネルなど)、体の構造、神経系の差異、進化的環境適応**によって多様です。

- 例えば哺乳類はだいたい30℃以上で暖かさや暑さを感じやすい一方、両生類や爬虫類ではかなり異なる温度感受性を持っています。

- そのため、生物ごとに“暑さ寒さの感覚温度”は異なり、飼育や共存の際にはそれを考慮することが重要です。

以上の内容は、生理学研究所の分子レベルの研究成果や生物の体温調節メカニズム、神経系の研究などに基づいています[1][2][4][9]。もしさらに特定の動物種について知りたい場合も教えてください。

[1] https://www.nips.ac.jp/release/2011/04/_trp.html
[2] https://wanchan.jp/column/detail/40534
[3] https://note.com/right_rhino2901/n/nc346d9519570
[4] https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2022.940236/data/index.html
[5] https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu1962/14/11/14_11_703/_pdf/-char/ja
[6] https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/42/sc42-1.pdf
[7] https://www.cruiselife.co.jp/guidance/?cat=635
[8] https://www.nips.ac.jp/thermalbio/handbook2/TB-Handbook_V2_200423.pdf
[9] https://bonoops.com/%E3%83%92%E3%83%88%E3%81%A8%E7%8A%AC%E3%81%AE%E4%BD%93%E6%84%9F%E6%B8%A9%E5%BA%A6%E3%81%AE%E9%81%95%E3%81%84/
[10] http://tenaca-nips-2016.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20161004145432-C9A0307CDC5BFFBE368042C37301506118242A368CDD5986EDA4A983ED7B8D92.pdf