暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症予防のために1954年にアメリカで提案された指標です。この指標は、気温だけでなく湿度や日射などの環境要因を考慮しており、人体の熱収支に大きな影響を与える要素を取り入れています。以下に、WBGTの詳細について説明します。

## 暑さ指数(WBGT)の定義と測定方法

### 定義
暑さ指数(WBGT)は、以下の3つの要素を組み合わせた温度指標です:
1. **湿球温度(Natural Wet Bulb Temperature, NWB)**:湿ったガーゼを巻いた温度計で測定され、蒸発冷却効果を反映します。
2. **黒球温度(Globe Temperature, GT)**:黒色に塗装された球体の中心に温度計を入れて測定され、日射や輻射熱の影響を受けます。
3. **乾球温度(Dry Bulb Temperature, DBT)**:通常の温度計で測定される気温です。

### 測定方法
WBGTは、以下の計算式で求められます:
- **屋外の場合**:$$ \text{WBGT} = 0.7 \times \text{湿球温度} + 0.2 \times \text{黒球温度} + 0.1 \times \text{乾球温度} $$
- **屋内の場合**:$$ \text{WBGT} = 0.7 \times \text{湿球温度} + 0.3 \times \text{黒球温度} $$

これらの測定値は、乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計を用いて計測されます[1][2][4]。

## 暑さ指数(WBGT)の歴史

暑さ指数(WBGT)は、1954年にアメリカのYaglouとMinardによって提案されました。これは、サウスカロライナ州パリスアイランドの海兵隊新兵訓練所で熱中症のリスクを事前に判断するために開発されました。この地域は湿度が高く、訓練が厳しいため、熱中症のリスクが高かったのです[4]。

## 暑さ指数(WBGT)の有効性と利用

### 有効性
WBGTは、人体の熱収支に影響を与える湿度、日射・輻射熱、気温の3つの要素を取り入れているため、熱中症のリスクを評価するのに非常に有効です。特に、湿度や日射の影響を考慮することで、単純な気温よりも正確に熱中症のリスクを評価できます[1][2]。

### 利用
WBGTは、労働環境や運動環境の指針として国際的に認められており、ISOやJIS(日本工業規格)で規格化されています。例えば、ISO 7243やJIS Z 8504では、WBGTを用いて作業者の熱ストレスを評価する基準が定められています。また、日本スポーツ協会や日本生気象学会も、熱中症予防のための運動指針や日常生活に関する指針を公表しています[1][3]。

## WBGTの算出と観測

### 算出方法
WBGTは、乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計による計測値を使って計算されます。具体的には、以下のように計算されます:
- **日射のない場合**:$$ \text{WBGT} = 0.7 \times \text{自然湿球温度} + 0.3 \times \text{黒球温度} $$
- **日射のある場合**:$$ \text{WBGT} = 0.7 \times \text{自然湿球温度} + 0.2 \times \text{黒球温度} + 0.1 \times \text{乾球温度} $$

これにより、気温や湿度だけでなく、気流(風速)の影響もある程度評価することができます[3][4]。

### 観測
WBGTの観測には、市販のWBGT測定器が広く用いられています。これらの測定器は、ISO 7243やJIS Z 8504に基づいて設計されており、自然湿球型、湿度センサー型、黒球のない簡易型など、さまざまなタイプがあります。しかし、特に黒球を持たない簡易型測定器については、測定値の正確さに問題があることが指摘されています[3]。

## WBGTの指針と注意事項

### 指針
WBGTの値に基づいて、熱中症のリスクを評価し、適切な対策を講じることが推奨されています。例えば、以下のような指針があります:
- **危険(WBGT 31以上)**:すべての生活活動で熱中症の危険性が高く、高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。
- **厳重警戒(WBGT 28~31)**:外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
- **警戒(WBGT 25~28)**:中等度以上の生活活動で熱中症の危険性がある。運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取る[1][2]。

### 注意事項
WBGTの測定や利用に際しては、以下の点に注意する必要があります:
- 測定器の精度を確認すること。
- 測定環境(屋内・屋外)に応じた適切な計算式を使用すること。
- 熱中症予防のための指針に従い、適切な対策を講じること[3][4]。

## 結論

暑さ指数(WBGT)は、湿度、日射・輻射熱、気温の3つの要素を考慮した温度指標であり、熱中症のリスクを評価するために非常に有効です。労働環境や運動環境の指針として国際的に認められており、適切な対策を講じることで熱中症の予防に寄与します。WBGTの測定や利用に際しては、測定器の精度や測定環境に注意し、指針に基づいた適切な行動を取ることが重要です。

Citations:
[1] https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php
[2] https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php
[3] https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2017/102-column-1.html
[4] https://www.wbgt.env.go.jp/doc_observation.php
[5] https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bohan/nechusho/71659120220707094953371.files/02_0417.pdf