久しぶりのブックレビューとなります。
お手元眼鏡が欲しかったんですが、
既製品だと乱視も入っている僕には合うものがなかったので、
ちゃんと視力を測定してもらって、合うものを作りました。
これで読書も快適にできそうです。
その第一弾として、今回の作品を紹介します。
『あなたが誰かを殺した』
東野圭吾 著作
やじおんガイド:☆☆☆☆(これまでとは趣が異なる加賀恭一郎)
〜帯裏から〜
8月の別荘地。様々な家族が夏を過ごすためにやってくる。
総合病院を経営する夫妻と我が儘な一人娘。その婚約者。
大企業の会長とやり手の妻とその部下家族。
経営者の妻と公認会計士の夫のパワーカップルと、中学生の娘。
別荘地に移り住んだ未亡人、その姪夫婦。
そしていまは空き家になっている別荘。
彼らには、毎年恒例の行事があった。
それは優雅なバーベキュー・パーティ。
いつも通り開催されたその催しが、思いがけない悲劇の幕開けとなる。
事件に巻き込まれた家族たちは、真相を自分たちの手で解き明かそうとする。
そこに現れたのは、長期休暇中の刑事・加賀恭一郎。
私たちを待ち受けていたのは、想像もしない運命だった。
久しぶりの読書は、加賀恭一郎シリーズ最新作をチョイス。
東野圭吾作品の中で、湯川学と並んで好きなキャラクターなんです。
その最新作となれば、読まない手はありません。
まずはやじおんガイドから。
今回は4つ星としました。理由は後ほど。
次にストーリーですが、ここはこれまで通り帯裏解説に委ねます。
さてこの作品、これまでの加賀恭一郎シリーズとは少し趣が異なります。
別荘地で無差別殺人事件が起きるのですが、
犯人は早々に逮捕されます。
え、事件がいきなり解決しちゃってるじゃん、と思った方、
ご安心下さい。ここからが本編なのです。
今回の加賀は休暇中。無差別殺人に巻き込まれた家族たちが、
真相を探るために検討会を開くんですが、そこに加賀を呼んだわけです。
なので加賀は公務ではなく、プライベートで捜査、というより推理と実証を行うんです。
この辺、少しスピンオフ的な匂いがします。
オブザーバーに捜査本部の刑事が出席し、事件当時の捜査状況や、
送検の内容、さらには生き残った家族たちの証言から、
この無差別殺人事件の裏に潜む真実に迫っていきます。
少しずつ真相に迫るのは、これまでと同じですが、
それぞれの証言や捜査の矛盾点、捜査本部が欠いている決定的な動機。
それらを理路整然と整理し、加賀特有の嘘の見抜く審美眼が相まって、
徐々に晒される別荘地に集ったセレブたちの闇は、必見です。
最近よく耳にする親ガチャ。
医療過誤、パワーハラスメント、そして不貞行為。
比較的ありがちな闇が交錯する時、心の奥底に眠る汚泥が噴出し、
人の心はダークサイドへと転げ落ちる。
途中でなんとく、この人物かこの人物が怪しいと察することはできますが、
その理由と意外な結末は、東野作品らしさがあります。
ではなぜ、星をひとつ減らしのか。
やっぱりスピンオフ的な感覚が、王道の加賀恭一郎シリーズと異なるので、
好き嫌いが分かれると思い、減らしました。
でも加賀の飄々とした態度と鋭い指摘。
ちょっとした挙動から嘘を見抜く力量。
加賀恭一郎という人物を知るには最適な作品なので、
これまで『新参者』を始めとする加賀シリーズを読んだことがない方は、
これを読んでから、シリーズを読むのも一興かと思います。
さて次の作品ですが積み読本が2冊ほどあるので、どちらかを読もうと思います。