時が経つのは早いもので、

 

明日はもう3月です。

 

春がすぐそこまできてますね。

 

あと少しで桜の開花という便りも届くこの季節、

 

夜はゆっくりと読書なんていかがでしょうか。

 

今回ご紹介するのは、こちらの作品です。

 

 

 

 

 

『教誨』

柚月裕子 著作

 

やじおんガイド:☆☆☆☆☆(哀しくて辛いけど、優しさに満ちた感じがした)

 

〜帯から〜

幼女二人を殺めた女性死刑囚、

最期の言葉ー

「約束は守ったよ、褒めて」

事実と真実が反転する、

慟哭のラスト!

「哀しい物語ではあるけれど、罪と罰の真髄を見た気がして心が震えた」

黒木瞳(俳優)

 

 

久しぶりに柚月さんの作品を読んだ気がします。

 

いや、もしかしたら初めてかも。

 

映画化された作品を見たことがあるので、

 

読んだ気になっているかもしれません。

 

そんな僕の記憶はさておき、

 

まずはやじおんガイドから。

 

これは文句なしの満点、5つ星です。

 

次にストーリーですが、帯解説がとても簡素なので、

 

のちに少しだけ紹介しますね。

 

この物語は帯解説にある通り、幼女二人を殺害し死刑判決が出た女性受刑者の、

 

死刑が執行されたところから始まります。

 

彼女が最期に残した言葉、

 

「約束は守ったよ、褒めて」

 

この言葉を、意図せず身元引受人となってしまった吉沢香純は、

 

遺骨を引き取りに行った東京拘置所の小林刑務官から聞かされた。

 

幼い頃に一度だけ会った遠縁の女、

 

三原響子は執行される直前にそう言い残したという。

 

あの時ほんの一瞬だけ言葉を交わした響子と、

 

事件後に世間で言われ続けた鬼畜な女とされた響子の印象が、

 

どうしても重ならない香純は、

 

遺骨を供養してもらおうと、響子の故郷へ向かうが、

 

そこで最期の言葉の意味と真実を知るために、

 

響子を知る人たちから話を聞こうと奔走し始めた。

 

香純がたどり着いた、事件の真実とは。

 

なぜ響子は我が子と近所の幼女二人を殺めてしまったのか。

 

事件と、その背景が明らかになった時、あまりにも哀しく、

 

そして虚しいほどの優しさがじんわりと溢れ出す。

 

まぁストーリーはこんな感じです。

 

実は似たような作品を、ついこの前読んだんです。

 

レビューも上げている『罪の境界』です。

 

最期の言葉を残した人物は性別も立場も生い立ちも違うけど、

 

最期の言葉を聞いた主人公が、その真実に辿り着くための旅路は、

 

似ている気がしました。

 

この作品はとにかく感情の表現が秀逸です。

 

ストレートのそれぞれのキャラクターに感情移入できます。

 

そして気が付くと、物語の中に読者を絡め取っているんです。

 

もう目を逸らせない。

 

いや逸らしてはいけない。

 

香純と共に、真実と事実の扉をひとつひとつ開けていくしかなくなります。

 

そしてあまりにも時代錯誤の村社会に、恐ろしささえ感じる。

 

確かに昭和時代にあった村社会の意識。

 

そこに宿る、ちっぽけな男たちのちっぽけな矜持。

 

それが周囲の人々を蝕む。

 

そんな事さえ気づかず、虚勢を張ることでしか己の存在を示せない、

 

井の中の蛙たちに、怒りさえ覚えました。

 

ましてそれが、この犯罪の根底にあると知った時、

 

きっと読者は暗澹たる思いに駆られる事でしょう。

 

少しネタバレしてしまいましたが、

 

令和の今でも、もしかしたら自然環境の関係で閉ざされた部落には、

 

まだ蔓延っていることかもしれませんね。

 

事件の発端となった「優しさ」に、

 

やるせない気持ちになりました。

 

でも響子の最期の言葉が叶えられたと、僕は信じたいです。

 

読んだ人によって、印象の変わる作品だと思いますが、

 

罪とは何か。

 

罰とは何か。

 

人生の意味は?

 

優しさと哀しさの境目は?

 

本当に守るべきはなんなのか。

 

守るということの意味とは。

 

いろいろな想いが巡る、物語でした。

 

決して難しい言葉で綴られた作品ではありません。

 

恐らくありふれた言葉と文章で彩られた物語です。

 

なのに、ここまで胸に迫る迫力があるのは、

 

さすがは柚月さんだと思いました。

 

とてもお薦めです。

 

だからこその5つ星としました。

 

サスペンスが苦手な方でも大丈夫です。

 

事件自体はかなり重いですが、

 

眉を顰めなければならないような、凄惨な表現はありません。

 

それよりも、登場人物たちの揺れ動く感情を感じ取ってください。

 

 

さて次の作品では、まだ手元にありません。

 

でも目星は付けてあるので今度の週末、手にしようと思ってます。

 

ちょっと厚めの作品なので、読了まで時間が掛かると思いますが、

 

読み終えたらレビューします。