著 松本信広  初版1969年5月
 
著者は20年前に亡くなっている。
この本が書かれたときはベトナム戦争真っただ中、アメリカが北ベトナムに空爆していた時期だ。
なので、現代のベトナムの事は詳しく書かれていない。
しかし、そのうち統一するだろうことは予言されていて、事実そのようになった。
 
ベトナムは神話の時代から山と平野部、火と水など、二元対立の話が多い。
川の下流、肥沃な大地に栄えた農耕民族がじわじわと版図を広げていく流れだ。
 
ベトナム民族にはおおむね二千年の歴史があり、その多くは隣の中国、カンボジア、タイなど陸続きの国々と争ってきた。また、ベトナム民族自体にも山岳を中心とした少数民族や、南北対立も有った。
そのため、内乱外乱ばかりの時期が長い。
最後にはフランスの植民地になる。
 
中国は詩文を重視し、科学を軽視した。
ベトナムも中国文化の多大な影響を受けていて、この点でも全く同じだ。
 
福沢諭吉が中国の有力者と会ったときにこう質問したという。
「そちらの国には西洋の学問を理解する人間は何人いるのか」
片手で指折り数えだしたので大変驚いたという事だ。
「我が国(日本)には500人以上の洋学、蘭学者がいるというのに、これでは中国は駄目だ」
と感じたとの事。
ベトナムも同じ状態で、近代兵器を持った数百のフランス軍にまるで歯が立たない。
 
ただ、フランス統治下で段々とベトナム人も近代科学の必要性に気付く。
その中で手本にしたのは明治維新を成し遂げた日本だった。
しかし、日本は自分たちの発展を安定させるため、フランスのベトナム統治を承認してベトナム留学生を追い出す。当時の日本は西洋諸国の資金や協力を必要としていた。
 
ベトナムの成り立ちや流れを知ることができ興味深かった。
 
因みにベトナムでは国内の南北対立がいまだに続いていて、南ベトナムで要職についていた人の子孫は今でも差別されている。