故郷忘じがたく候  司馬遼太郎著

 三篇の短編が収まっている。
 「故郷忘じがたく候」
 「斬殺」
 「胡桃に酒」

 第一は安土桃山時代、朝鮮の役で薩摩軍によって日本へ連れてこられた朝鮮人の一族についての話。
 明治維新までは古韓語を話していたと言う。名字も皆朝鮮時代のまま。故郷に似た地形の苗代川に住み、窯業を営んだ。
 第二は明治初期、少数で奥州に遠征した新政府軍の悲劇。あまりに軍隊の人数が少ないため、奥州人士に侮られ、奥羽越列藩同盟を作る動きを触発させてしまう。指揮した世良修蔵は仙台藩によって斬殺される。
 この時に部隊を指揮した下級将校が桂太郎。半端者の寄せ集めだった隊を良く率いた。将器の片鱗が見えたか。
 第三はこれも安土桃山時代。明智光秀の娘細川ガラシャの話。夫の細川忠興はとにかく異常だったようだ。妻がこの上もなく美しいため、妄執にとらわれてしまった。近づく男は誰も許せないため、奥に閉じ込め男子禁制とした。
 たまたま妻の姿を見た庭師や屋根師も斬殺してしまう。
 なんとも恐ろしい。