エマールと言えば、作曲家メシアンの弟子で

現代音楽専門のピアニストだと思っていたのだが、10年ほど前に映画『ピアノマニア』を観て凄いピアニストだと知った。

(下記参照)

 


その後に出たバッハやドビュッシーなどの

アルバムでの、研ぎ澄まされた音と音楽への

集中力は素晴らしかった。

今回のプログラムは小品集で、どれも数分かからない。


シューベルトのワルツや舞曲など40曲
クルターグ「ピアノのための遊び」から22曲
バッハ「平均律クラヴーィア曲集」から6曲
バッハ「フーガの技法」から3曲

前半はバッハとクルターグ

後半はシューベルトとクルターグの
作品をモザイクのように組合わせたものであった。

クルターグは初めて聞いたけれど
ルーマニア生まれの、まだ存命の作曲家で
現代曲らしい深い響きの曲。

特に後半はクルターグの曲の最後の響きに呼応するようにシューベルトの舞曲が始まり、何曲か弾くとまたクルターグの曲という構成で、凄まじい集中力で最後まで弾ききり、終曲のあと30秒くらいは残心のようにじっとしていた。

ピアノの音色の深い響きに浸った素晴らしい時間だった。

 

ちなみにYAMAHAホールなので、使用ピアノは当然YAMAHAだったが、休憩中にも調律が入っていた。

 

 


今回のプログラムに寄せられたメッセージも哲学的で深いものだ。
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COVID-19のパンデミックは、私たちを孤立させ、また人々を社会から隔絶させた。それによって、自分たちと音楽との関係を改めて明確にすることを余儀なくされたと言えるだろう。
 

そうして現在の私たちはステージ上の効果や演出といったものよりも、より私的でより親密な価値観を好むようになっている。

このプログラムは、

究める(バッハ)、

舞う(シューベルト)、
日々を綴る(クルターグ)

といった行為に捧げられた小品の
セレクションの中を旅するものだ。
それは内省と空想の合間を揺れ動きながら、
秘密の花園への扉を開くよう

私たちを誘うのである。

ピエール=ロラン・エマール


映画『ピアノマニア』
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 エマールがバッハのフーガの技法を録音するため、細部まで音にこだわり抜き、スタンウェイの主任調律師と何度もやりあう、マニアックな映画。


映画『ピアノマニア』紹介

 

 



映画『ピアノマニア』予告編