ステーションサイエンスの部では、加工対象物が一つのステーション(加工プロセスと在庫点で構成される)を流れていくときに、どのように澱んでいくかを説明した。その要諦は
・生産キャパシティの限界に近い点で、とくにばらつきの大きな工程での操業は、生産を不安定にさせ、サイクルタイムが長くなること
・生産キャパシティを稼ぐためにバッチを大きくしすぎると、サイクルタイムが長くなること
・バッチ形成時間と待ち行列を考慮するとバッチには適正なサイズがあり、そのサイズにおいての生産投入がサイクルタイムを最短にすること
・ばらつきを制御し、セットアップタイムを短縮することにより適正バッチは1個まで落とすこともありうること
となる。
続くラインサイエンスの部では、「在庫点によって区画され、論理的に繋がれた工程プロセスからなるフローがオペレーション上でどのようにふるまうかを考慮すること。とくに、フローの中にあるプロセスの合流により生じる問題に焦点をあてる。」が考察される。すなわち、繋がれた複数のステーションを対象物が流れていく場合にどのように澱むかの問題である。
それでは、繋がれたステーションはどのように全体のフローに影響するのであろうか。そのイメージとしてビュッフェ形式のパーティーを考えてみる。(Supply Chain Scienceの説明とは異なるが、より理解しやすいと考える。)パーティー会場で100名が集っている。料理は10品で、簡単な調理を行い盛り付けに0.5分を要する。すべての料理を待つことなくサービスされるのであれば、一人最短0.5分×10品=5分で終わる。会場に10人までであれば、10人共に譲り合い空いている料理を受け取るのであれば、全員が5分で料理を受け取ることができる。11名からは、一人は常にだれかの後ろに立つことになるため5分余分にかかり、全員が料理を受け取るには5分+5分×1人で10分。一つの料理に10人ずつ並びサービスを受けていくと、全ての料理を盛り付けてもらうのに5分×10人=50分となる。最悪の場合は、100名が一つひとつの料理に並びながら料理を盛り付けてもらう場合で、0.5分×100名×10品=500分。すべての料理を取りそろえるのに8時間以上で、延々とパーティーは続くこととなる。
ここで、リトルの法則TH=WIP/CTより、パーティーの参加者WIP,パーティーの時間CT,料理の数THとすると、最短の場合のTH 2人/分=WIP100/CT50,最悪の場合TH 0.2人/分=WIP100/CT500となる。ここで注目するべきは、各々のサービスステーションは同じ能力でありながら、サービスを受ける人の流れ方により、サービスの効率は10倍もの差異を生むことである。
「理論的には、極端にプロセスタイムに違いのあるシステムは、極端なバッチ処理のシステムと同様に振る舞う。;加工時間ゼロ(訳者注;加工を受けていない状態、すなわち待ちの状態を意味する)の加工対象物は、確実に長い加工時間にある加工対象物の後ろで待っている状態である。 ・・・大きなバッチにせよ加工時間のばらつきの問題にせよいずれもが、加工プロセスの効率を最悪のケースに追い込む可能性があることである。」大きなバッチ処理や、均整の取れないステーションの組み合わせは、工程の空き時間を生み、生産性を阻害することを意味している。
これらの考察から、Supply Chain Scienceでは次の原理を明らかにする。
●最大生産効率の原理:どのような加工フローにおいても、ボトルネック工程の生産レートrb,最短総加工時間T0,WIPレベルwとした場合
TH ≤ min{w/T0, rb}
訳者注:wを追加するほどにTHは上がるが、スループットはrbを天井とする
CT ≥ max{T0, w/rb}
訳者注:wを減少するほどCTは減少するが、リードタイムはT0より短くならない
先のビュッフェの場合ではw=WIP10名まではCTは5分で一定であり、11名からはCTが増加した。このWIPは臨海W0とされる。
●最少生産効率の原理:どのような加工フローにおいても、ボトルネック工程の生産レートrb,最短総加工時間T0,WIPレベルwとした場合
TH ≥ 1/T0 最少のスループットは、1/T0となる
CT ≤ wT0 最長のサイクルタイムは、wTOとなる
先のビュッフェの場合では、同じ料理にw100人が群がった場合であり、最小の料理サービス時間5分にw100人を乗じた時間500分がサイクルタイムである。
●定義(PWC生産性):実最悪ケースPractical Worst Caseの条件を満たすボトルネックレートrb,最短総加工時間T0およびwレベルのWIPを持つプロセスフローのスループットは
THpwc=w/(w+W0-1) ここでW0=rbxT0 であり臨海的なWIP仕掛品残高となる
ここでW0=rbT0は臨界的な仕掛(先のビュッフェでは10名が臨界点。11名からは仕掛の増加がスル-プットの
向上に結び付かない点)である。
これらの最大生産効率、最小生産効率、PWCを図示すると下記の通りとなる。
知的財産の問題で割愛
PWCの算式の導出: このPWCの算式は、以下のように単純に導くことができる。W個の仕掛が工程全体にランダムに配置されている=一つの料理に群がっていないで散らばっていると仮定すると CTpwc = To + (w-1)/rb 最良ケース ランダムに配置 これをリトルの法則から、スループットを求めると w/THpwc = To + (w-1)/rb ∵WIP/TP=CT w = (To + (w-1)/rb) x THpwc w x rb = (To x rb +(w-1))x THpwc 臨界仕掛Wo THpwc = (w / (Wo + w -1)) x rb |
上記の実際の意味、PWCの式をどのように使うかについては、次回に整理してみたい。実をいうと、この5章がSupply Chain Scienceの最大の山場、画期的であり難解な部分であります。つたない説明で本質をお届けできないことに歯がゆく忸怩たる思いです。この説明で、果たしてお読みになっていただける奇特な方がおられるか、不安でありますが、ちらっと見でも愚生の駄文にお付き合いいただきましたこと、感謝感激であります。