「進化する生産管理会計」「実務に活かす管理会計のエビデンス」 | yahito-99のブログ

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Industrial4.0にかかわる情報を、管理会計の立場から集めてアップしていきます。兎に角書いていくことで、織り重なって繋がり、何かの絵になります様に。

  中国が国力を挙げ、車のゲームルールをひっくり返し、EVの時代を迎えます。日本の産業はどのようになっていくのでしょうか?本当に不安です。Massiveな車は、EV化しないのでしょうか?そうなのだといいのですが。。。

 ものづくりに適した管理会計について、年老いて病に伏しつつも、いまだに考えております。一体全体どのな管理会計が有効なのでしょうか?

 原価計算は製造業の採算計算に用いられています。モノを作るときに、だれが、どの機械が、どれだけモノづくりに関与したか、その時間、貢献度に応じて、生じた費用を割り振る理屈はとても理にかなっているように思われます。事前に、モノづくりに要する人及び設備の時間を標準的に想定し、標準のコストをもとに値決めを決めることも、だれもが納得するでしょう。 

 モノを売るに際して、どのものから作るべきかProduct Mixを判断する場合、この標準原価や配賦を行った原価指標をもとに決定するのは、間違いだ。というのが直接原価計算でありスループット会計の主張であります。お前ごときにいわれずとも、そんなの知ってるよ!ですよね。失礼しました。

 なぜ、配賦を除く限界利益で判断するのが良いかといえば、原価計算で配賦するコストが「埋没原価」を含むからであります。今後の判断に入れると間違えるコストだからです。働いている人のコストは、これから支払われるから、埋没原価じゃないだろうとも思いますが、働いている人は契約で支払いが決まっているので、今後の判断による総コストへの影響はありません。当然減価償却費などの機械のコストは過去の支払いで、明らかに埋没原価です。

 IOTでの原価計算の改革を唱える方々の中には、加工時間をIOT計器を用いてリアルタイムで補足し、原価を正確に反映することを主張する方があります。対策を即時にフィードバックすることの重要性を唱えるものです。しかしながら、今後の判断に影響を与えることのないコストをリアルタイムで割付て、全体の利益の改善に向けた判断をもたらすのでしょうか?とりあえず収集しようではなく、一体何に使えるかです。 

 もちろん、工程でトラブルがあったときに原価にその反映があり、対応するというのはありかなと思いますが、それは原価計算の金額によりも、工程フローの別のデータのほうが的確でしょう。原価は費用の高低しか示しませんが、工程の情報は加工速度や仕掛品の待ちなど、渋滞を解消しうるデータを提供します。原価情報は標準計算を見直す場合に間違いなく必要でしょうが、「リアルタイムでの必要性」はないように愚生には思われます。標準原価の見直しは、一定期間が終了後でよいのではないでしょうか?

 また、直接加工時間の節減度合を時間レートで評価することで、改革を促す方法もあります。しかしながら、その工程の改善がどの場所でーすなわち、ボトルネックで生じたか(タクトタイムが変わる)、非ボトルネックで生じたか(タクトタイムは変わらないがリードタイムは変わる)ーで損益に与える効果が全くことなり、合理的な指標とはなりえないように思われます。また、そもそも評価金額として時間レートを乗ずることが正しいものなのかも議論となるところです。

 ついでながら、工場の総労働時間のうち、正味加工時間の割合を高めること、モノの流れを制御しリードタイムを短縮することの二つを改善の指標とするのを見たことがありますが、これは矛盾した目標であります。正味加工時間を増やすことはモノを待たせることであり、リードタイムを短縮することは加工者を待たせることです。(これは主客を入れ替えても成立する双対問題というモノではないでしょうか?)解決策としては、モノの都合と加工者の都合をつけ(ジャストインタイムで出勤し、ジャストインタイムで加工対象物が流れ、お互いに待ち時間がない状態を実現すすること)、コカ・コーラのボトリングがごとく流れるように生産すればよいのですが、今度は在庫にツケが回ります。在庫リスクが高い商品の場合には、新聞売り子の求める在庫適正化のもとに、加工者、加工対象物を理想的に回すことを目指すことになり、どえらく難しいのではないでしょうか。一つの目標は諦め、リードタイム短縮を第一とし、在庫を極限まで落とし込み、CCCキャッシュコンバージョンサイクルの最大化こそ正義とされる方もおれますが、その場合にはたぶんに正味時間/総労働時間の比率が下がり、スループットが犠牲になっている可能性があります。CCCは素晴らしいけれど、コストで負け、売上で負けているみたいな事例になってしまいます。正味加工時間比率の最適化、若しくは、CCC最大化どちらを選ぶべきかは、加工対象物の在庫のリスクの高低によって決定するべきです。(そんなことは、お前ごときが言わなくても。ですよね。失礼しました)

 工程改善に必要なデータは、Operation Managementの観点からは、バッチサイズ、タクトタイム、各テーションの直接加工時間、加工対象物到着・直接加工時間のばらつき、その結果計算される待ち行列時間、加工対象物の到着時間、さらにはステーション間でのモノの流れ方(Pull/Push)、ボトルネックの場所が挙げられます。それらのデータによりSupply Chain Scienceの原理からリードタイムとスループットの因果関係が整理され、加工対象物の流れをコントロールすることが可能となります。

 それらのPhysicalなデータをManetaryに置き換えるのには、それらのPhysicalなIndex、ボトルネック、Value Stream Profit(スループット会計で、直接法にもつづくキャッシュフロー計算書に同等なもの、煩わしいバランスシートが不要であります!)を備えたリーン会計がふさわしいのでは?と思えます。なんたって、米国で実績と体系がすでに出来上がっており、これを学ばない手はありません。なぜ、日本でもっと注目されないか?実践への導入が図られないか?会計コンサルにとっては、大きな市場に思われますが、本当に不思議です。

 標題の本は、管理会計の実践的な効果をエビデンスという切り口で分析し、リーン会計こそがモノづくり管理会計で有用であるとの結論を導き出しておられます。この本2冊は、とても読みごたえがあり素晴らしい。ぜひぜひご一読をお勧めします。

(またもや生意気なことで申し訳ありません。逆効果になることを危惧いたしますが。。)