命と痛みの利益衡量 | 福岡の弁護士 矢口耕太郎のブログ

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2月6日に
カナダの最高裁判所が、医師による自殺ほう助を禁止する法律を憲法違反として、安楽死を限定的に認める判決を出しました。

主な要件として、
自分で判断できる成人が命を絶つことに明確に合意して、重大で治療の見込みがない疾患があって耐え難い苦痛を受けている場合

に、安楽死の選択を認めるべきとしています。


命は何事にも代えることができない尊さがあると考えられることから
つい最近まで世界でも安楽死は認められていませんでした。

世界的に見ると、2001年にオランダが安楽死を合法化したのが国家レベルでは初めてです。


今でも日本では安楽死を積極的に認めていません。医師が殺人罪か自殺ほう助罪に問われることになります。

東海大学病院安楽死事件では、地方裁判所レベルで、
①患者が耐えがたい激しい肉体的苦痛に苦しんでいること
②患者の病気は回復の見込みがなく、死期の直前であること
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために可能なあらゆる方法で取り組み、その他の代替手段がないこと
④患者が自発的意思表示により、寿命の短縮、今すぐの死を要求している

という極めて厳しいの条件のもとで例外的に許容されうるとしました。ただ、患者の「同意」、推定的意思があったといえるのかという点を極めて慎重に検討して、結論としては医師に殺人罪を認めています。



命という何事にも代えられない利益と

余命わずかな人が激しい痛みで苦しんでいるときに安らかに死ぬという選択をすることの利益

どちらが優先されるべきか・・・


本当に、それぞれの人の価値観によって結論が異なる問題だと思います。

今、私としては、安楽死も限定的に認めてよいのではないかと考えていますが、日本でもこれから議論が進んでくるかもしれませんね。