前回の続きといいますか、元々「rendre visiteって何だ?」という疑問から始まったお話なので、むしろ前回の代名動詞とか再帰代名詞の方が寄り道だったりするんですけれどもね。
「rendre visite」は「人を訪ねる」という意味合いの言葉だそうですが。
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
(私が引っ越したら、私に会いに来てください)
口が覚えるフランス語 より
「訪れるんだったらvisiterでいいじゃん」と思いませんかねみなさま。
そんなことをブツブツ思いながら、文構造の解釈にも少し不安があったので調べてみることにしましたよ。
rendre visiteは代名動詞じゃなくって他動詞
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
「me rendras visite」と代名詞が動詞の前に来てたのと、辞書を引くと「se rendre」という代名動詞が出てくるので僕はてっきり代名動詞だと思いこんでおりました。
でもこれは代名動詞ではなく、「rendre visite à + 人」という他動詞rendreの用法のひとつだったのでした。
その辺のところはこちらでお話した通りでございますね。
rendreの基本的な意味
一応、rendreの辞書の意味を確認しておきます。
新スタンダード仏和辞典 デスク版 より
rendre:他動詞
返す、返却する
与える
(義務などを)果たす
(敬意などを)払う
捧げる
(決定などを)下す
(収穫などを)もたらす
(有利な条件を)与える
表現する
何とも、とらえどころがない感じですね。
visiteは名詞
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
visiterの過去分詞か何かだと思ってましたが、なんと名詞でした。
新スタンダード仏和辞典 デスク版 より
visite:女性名詞
rendre visite à qn
人を訪ねる
動詞visiterのページではなく、名詞visiteにこの用法が載ってたので、例文のvisiteも名詞と考えてよいでしょう。
ちなみに、元々は動詞visiterを辞書で調べてて、同じページに「名詞のvisite」があり、たまたま発見できました。
前回の記事ではオンライン辞書のコトバンクに助けられましたが、今日はアナログ辞書が輝いています。
これは、辞書はオンラインも紙も両方使っていけという暗示なのでしょうか。
名詞なのに冠詞がないのはなぜか
visiteが名詞だというのであれば、避けて通れないがこの「冠詞問題」です。
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
visiteは名詞。
じゃあなんで無冠詞なのかって話です。
いつもだったらここで多大な時間とエネルギーを消耗してライフがゼロになってしまうところですが、、、
六角豊 これならわかるフランス語文法
限定詞なしの名詞の使用 より
<動詞+限定詞無しの名詞>という形の成句的表現(動詞相当句)が多数あります。いくつか見ておきましょう。
rendre visite à 訪問する
「いくつか見ておきましょう」の中に入ってた!
慣用的に使われる成句表現なので無冠詞でOKだそうな。
六角先生にはもう助けられぱなしですね。
visiterとrendre visite à~の違い
「visiterでいいじゃん」と冒頭で不満を漏らしましたが。
「visiterじゃだめです」だそうです。
こちらも大正義ペギィ先生のフランス語講座
「J’ai visité des amis」は間違い / 正しい「visiter」の使い方【フランス語】 より
「Visiter ○○」は基本的に、場所や建物を「訪れる」や「見物する / 見学する」という意味。
「人に会いにゆく」と表現したいときには、基本的に「Rendre visite à + 人物」が自然なんだそうな。
詳しく尻たい方は、記事を読んでみてくださいね。
ちなみにぺぎぃ先生が参考にしてる文献には、Académie françaiseというサイトがありまして。
このAcadémie françaiseはフランスの国立学術団体で、とにかくフランスの知識エリート達が集まるすげーところのようです。
そんなダイナマイトスーパー知識エリート達が集まって、「フランス語というのはね」と丁寧かどうかは尻ませんが、解説してくれています。
フランス語文法についての知見を得るための情報源としては、恐らく世界最強だと思います。
だって、フランス語ネイティブの、かつ知識エリート達がフランス語文法を解説してるわけですから。
ただし、難点がひとつだけありまして。
それは、その解説を理解するのに「高いフランス語力が必要」ということです。
フランス語がおぼつかないからフランス語勉強してるわけで、そんな私達に対して「フランス語教えてやるからフランス語勉強してこい」って、なんの一休さんだって話ですよね。
ぺぎぃさんはフランス語ネイティブなので、このような世界最高峰の参考文献にもアクセスでき、かつそれを日本語にして私達に届けてくれる信頼度の高い先生なのです。
以上を踏まえまして。
本日の例文を見てみましょう。
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
(私が引っ越したら、私に会いに来てください)
「me」は「à + moi」が置き換わった間接目的語人称代名詞。
話をわかりやすくするため、間接目的語人称代名詞を「à + 人」の形に戻してみましょう。
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
↓
Tu rendras visite à moi quand j'aurai déménagé.
visiteは「訪問」を意味する女性名詞ですが、「rendre visite à qn」という成句では無冠詞になります。
文の要素を整理すると、このようになるわけですねー。
Tu:主語
me:間接目的語人称代名詞(元の形はà + moi)
rendras:他動詞 2人称未来形を用いた命令
visite:直接目的語
quand j'aurai déménagé:時の関係節
僕の場合ですが、直訳風にして飲み込みやすくすることもあります。
Tu me rendras visite quand j'aurai déménagé.
(君は私に訪問を行ってください、私が引っ越した時に)
すっきり!
と、いうわけで。
本日の例文を用いた記事は、本当はこの1回だけの予定だったのですが。
代名動詞と再帰代名詞の理解が甘くて「何か違くね?」ってなって、記事が2回に分かれてしまいました。
se rendre→代名動詞 意味:行く、赴く
se rendre visite→他動詞 意味:(人を)訪れる
意味も構造も似通ってくるから、これは絶対に混乱する。
比較的余裕をもってお勉強できている今の段階で気づけて良かったです。
クリスティアン先生と山下先生の出題センスに感謝ですね。
みなさんも「rendre」にはお気をつけくださいませ。
そんなわけで以上、rendreが来たぞ!でした。
本日の参考図書達