今日は大先輩のレコーディングエンジニアさんと新宿ワシントンホテルの八吉という店に行きました。
彼は戦後の日本の音楽業界を引っ張ってきた職人の一人で、とても興味深い話が多かった。
中でも驚いたのは、中国の音楽業界は既にジャパンパッシングしているという事だ。
たまたま、うちの会社では以前からアジア新興国へのグローバル化を視野に入れ、音楽商品の企画やサービスを考案していたんだが他の企画に力を向けていたため、昨年末から社内での企画や会議を保留していた。
おおまかに言えば、「音楽文化が未成熟であろう中国や韓国」の富裕層向けの音楽制作事業などを計画していくつもりだった。

しかし先輩の話を伺って僕の考えていた計画が容易ではないことが理解できた。
どうやら事態はかなり厳しいようだ。理由はスピードにある。

中国にとってエンターテイメント、娯楽産業は世界に大して「豊かな中国」をアピールするツールの一つだ。
そうなるとそこには当然、国家の後押しがある。それはたとえば13億人の人口の中から優秀な人材を集めたり、潤沢な資金で易々と音響機材設備を手に入れることである。
かつて海を渡り、欧州やアメリカの技術を学び自国で改良、長い時間をかけ、きめ細かい商品づくりで世界の頂点に立った日本の技術者たちがいた。
まさに今の中国は戦後の日本を連想させるのだが、今は、インターネットで難しい機材の使い方から編集技術、ビジネスモデル、サポート情報までもを容易に手に入れることができてしまう。
グーグルの検閲問題などもあり、ITの壁があると言われる中国だが、世界の音楽が違法ダウンロードなどで溢れているし、いいとこどりの情報はしたたかに蓄積・分析し、すさまじいスピードで吸収している。
「音楽文化が未成熟であろう中国や韓国」などとは飛んだ勘違いであったし、逆にこの国はITを器用に使って成長しているということだ。
また、これは共産党政権である中国国家には「諸刃の剣」でもあり、一歩間違えるとこの国は大変な事になるとも思った。とても驚いた。
もっとも中国の音楽技術力に関しては既に日本を凌駕しているかもしれないとも先輩はおっしゃっていた。
そして今後、マーケットが成熟するにつれ、知識を蓄えた彼らが「Experience」という果実を手にした時、、、

音楽産業においても世界覇権を狙ってくる中国はもう目の前まで迫っている。

・・・かもしれない。

株式会社レックミュージシャン
八木野 太郎