イスラム国による日本人人質事件は2人が惨殺という最悪の結末を向かえた。
これにより安倍政権は「テロ国家との戦いだ」と自衛隊を海外へ派遣できる法案を整備していくと宣言した。
ロイターの記事を見ると「1月下旬に事件が発生して以降、自衛隊による在外邦人の救出に向けた法整備に意欲を示してきた」とある。
しかし、女性自身の記事を見ると昨年末の12月2日には外務省が後藤さん拘束の情報を得ていた、さらに、12月14日投票日であった衆議院選挙までこれを公開しないようにと口止めまでしていたとのこと。選挙への影響を危惧して…。
そういえば同衆議院員選挙で自民党の候補者の運動員が人身事故を起こして「選挙が終わるまで公開しないでくれ」と被害者側にお願いしていたという事件も報道されました。
こういうところに顕著に出ていますが、こんな「姿勢」の政権に今の国の舵取りを任せているということに本当に危機感を感じます。
今回の人質事件の結末を受けて、さあテロ国家との戦争だという流れだけには決してしてはいけないと考えています。
テロに対する国としての報復ということで、9.11の際の自分自身の話しを例に挙げます。
貿易センタービルにハイジャックされた二機の旅客機が突入して多くの市民が犠牲になった。あの映像をTVで見るたびに当時の自分は涙が止まりませんでした。
こんな極悪非道なことをするテロ組織は断じて許せん。アメリカがイラクに侵攻した時も、それが正しいと信じていました。報道の信憑性やイラク侵攻の正当性などをきちんと見ることも無く。
そして、あのような大規模なテロを経験したアメリカを何とか助けることはできないか。そんな思いも相まって2003年にアメリカへ留学しました。
僕が行ったのはオレゴン州のポートランドという都市。当時、英語も満足に話せなかった僕が街で出会うアメリカ人達に質問していきました。
「9.11を受けて今のアメリカの動きについてはどう思いますか?」
きっと「イラク侵攻は当然だ」「テロとは断固闘っていく」という意見が多く聞けるんだろうなというのが僕の予想でしたが、驚くことに話してくれる人が口を揃えていっていたのは「ブッシュやめてくれ」「No more WAR(戦争反対)」という言葉だったのです。
当時日本の報道ではアメリカのイラク侵攻を支持するようなものがほとんどだったと思いますが、現地のアメリカ人はまったく逆の考えを持っていたのです。
そして結果はどうだったでしょうか?「イラクに大量破壊兵器がある。それを根絶せねば」という大義名分の元でイラクに侵攻したアメリカでしたが、最終的にそんなものは無かった。
この戦争でどれだけ多くの民間人が犠牲になったのだろうか?
なぜ、自分は9.11で貿易センタービルに旅客機が追突する映像を繰り返し見させられて、アメリカのイラク侵攻を支持するような気持ちに傾倒してしまったのか?
その時の悲しみと悔しさはずっと引きずっています。
だから、もう同じ過ちは繰り返したくないのです。
確かにテロ組織による民間人を含めた殺人行為はどのような理由があっても許されるものではありません。
しかし、そこで感じた怒り、悲しみ、それを一度ぐっと抑えてみる必要があると思っています。それが困難だとしても。
なぜ、彼ら(イスラム国)があのような行為に出たのか。どのような人、組織でも喜んで人を殺すことなどはないと思っています。特に彼らは組織的なテロリスト集団と言われています。その、歴史や背景を知ること。
また、今回の人質事件に対する政権の対応はどうだったのか。最初に伝えた通り「選挙のために隠す」ぐらいなので、おかしなところが山ほどあることは容易に想像できますが。
そういうことを多くの人が少しでも知っていく必要があるのではないでしょうか。
アラブ諸国の人は本当に日本に友好的だと聞いています。日本人というだけで好意を持ってくれる市民が多くいるんだと、現地を旅行した、現地に住んでいたという僕の知り合いからそういう話しを聞いています。
そのような市民の思いを踏みにじるような行為を国としてするのであれば、一日本人として断固阻止していきたい思いです。あらゆる手段を使って。
古賀茂明さんが提唱された「I am not Abe.(私は安倍首相とは違います)」というメッセージを一人ひとりが世界に向けて発信していくこともいいアイディアだと思います。
賛同してくださる人は、自分らしいやり方で発信してもらえたらと思います。
最後に後藤さんのお母さんが伝えた言葉を紹介して終わりにします。
健二は旅立ってしまいました。あまりにも無念な死を前に、言葉が見つかりません。
今はただ、悲しみ悲しみで涙するのみです。
しかし、その悲しみが「憎悪の連鎖」となってはならないと信じます。
「戦争のない社会をつくりたい」「戦争と貧困から子どもたちのいのちを救いたい」との健二の遺志を私たちが引き継いでいくことを切に願っています。