テロワールとは
 

フランス語のTerre(土地)から派生した言葉で、
味や香りに現れる、その土地の風土(地質や気候など)を示す言葉です。


 

例えば同じブドウ品種で造ったワインでも、フランスのブルゴーニュ地方で造られたものと、アメリカのカリフォルニアで造られたものを飲み比べてみると、驚くほど風味に違いがみられます。

テロワールという言葉はワインやコーヒーの世界でよく使われますが、最近ではお茶や米、野菜など、多くの農産物で広く使われているみたいです。


さて、今日はミード(蜂蜜酒)のテロワールについて考えてみたいと思います。


 

ミードのテロワールは、原料である蜂蜜のテロワールとほぼ同義だと考えます。
(造り手や伝統手法もテロワールに含まれるという考え方もありますが、キリがなくなってしまいますので今回は考えないことにします笑)


では蜂蜜のテロワールとは何か

蜂蜜のテロワールを構成する最も大きな要素はズバリ、その土地の蜜源植物の植生だと思います。



日本には蜂蜜が採れる多種多様な花が咲いています。
それらは咲く場所も違ければ、咲く時期も違います。
さらに細かく見れば、含まれている植物ごとの蜜の割合も違うので、
同じ場所で育てているミツバチからでも、全く同じ蜂蜜は二度は採れないと言われています。

このことを考えると、蜂蜜はブドウと比較しても非常に強く、その土地の風土を反映しているものととらえることができます。



ですがはちみつ屋さんとしては、同じ商品でもロットによってそれほど味に違いが出てしまったら困りますので、わざとミツバチの巣箱を、周りに一定の種類の花がたくさん咲いている場所(リンゴ畑や桜がたくさん咲いている場所など)に移動させて、
その花の蜜だけの蜂蜜を作ったり、それぞれの場所で採れた蜂蜜をブレンドしたりして、味が一定になるように調整します。
つまりわざと蜂蜜のテロワール性を軽減させているのですね。

 



こういう言い方をするとはちみつ屋さんを非難しているように聞こえるかもしれませんがそうではありません。
そのような努力のおかげで蜜源植物ごとの特有の香りを楽しむことができたり、
逆にあまり快くない匂いの蜂蜜であっても、他とブレンドすることで美味しく利用することができるようになっています。

ちなみに日本は海外と比べて雨が多い国ですので、それもテロワールに反映されています。
蜂蜜の糖度は80°程度で、海外では水分含有量が21%以下とされていますが、雨が多く、湿度の高い日本ではこれが23%まで認められています。
 

したがって国産の蜂蜜は海外産のものと比べてさらっとしていて優しい味わいのものが多いと言われています。

このように、同じ種類のミツバチ(養蜂家さんが飼っているのは主にセイヨウミツバチです)でも、周囲の環境によって本当に様々な蜂蜜が得られ、これがテロワールによるものと言って差し支えないと考えます。

そしてそれはミード(蜂蜜酒)にしても同じことです。
蜂蜜を発酵させて造るミードは、その味の8割が原料蜂蜜の味に依存していると感じます。
私は普段仕事でミードを造っているのですが、使用する蜂蜜は日本で数か所、信頼できる契約養蜂家さんのものを使わせていただいています。

 

本当は自分の手で、ミード製造のためだけに採った、その土地の蜂蜜を原料に使いたいという気持ちはありますが、
会社としてやっていますので今のところ妄想するに留めています笑)


でも、いつかは挑戦してみたいですね