<記事の見出し> 「鴻海獲利慘退回20年前!」謝金河點出西進30年轉折:台商淘汰賽來了 ★風傳媒2020621日 上午10:10 

――《日本語訳》  鴻海(ホンハイ)の営業利益二十年前の水準に 大陸進出から三十年 「台湾企業は転換点にたつ」

 

 

コロナ騒動を経て、鴻海(ホンハイ)の営業利益が20年前に逆戻りしたとする記事。

 

大陸進出から三十年、台湾企業の淘汰が始まっているという。

 

米中貿易戦争やコロナ騒動に加え、近年両岸政府(すなわち中華人民共和国と中華民国)の対立が顕在化し、海峡を跨ぐ経済活動に暗雲が漂い始めている。

 

この記事は、台湾を代表するエコノミストで「財信傳媒」代表の謝金河氏の所見を紹介する形の報道である。

 

フェイスブックに投稿された20日付け、謝氏の論考は、「台商西進的卅年大轉折」というタイトル。

 

「台商」は台湾企業。「西進卅年」は大陸進出から三十年。「大轉折」は大転換点を迎えたの意味。

 

1988年初頭に蒋経国総統が病死。李登輝があとを継ぐなかで、「台湾=中華民国」の開放・民主化が進められ、九十年に入ると、対岸、すなわち中華人民共和国との「内戦状態」に終止符が打たれ、交流が始まった。

 

「あれから三十年」である。

 

門戸が開いたとたん、台湾の企業・メディア・商売人・有象無象が、津波のように大陸に押し渡った。今では、大陸とまったく無関係という企業も芸能人もまず存在しない。台湾籍を持ちながら対岸に家族そろって定住する人たちもおよそ二百万人に達し、ビジネスマンは年中海峡を往復している。

 

当時中国の賃金は300人民ドルから500人民ドルといわれた。進出してきた台湾企業は、特別の優遇を受け、安価で広大な土地と雲霞のごとき労働力を手中にした。現在シャープを傘下に置く鴻海(ホンハイ)が中国人従業員百万を配下に置いたと豪語するまで、長い時間はかからなかった。

 

すでに台湾経済界も、台湾芸能界も、海峡を跨いで稼いでいる。それのみならず、彼らは香港・シンガポール・ジャカルタ・バンコクなどに広がる中華圏というステージで天衣無縫に躍動している。とても日本などが適う規模でも相手でもなくなった。

 

台湾と中国はこの三十年、二人三脚で世界経済を席巻しつつ、政治的には激しい主導権争いを演じてきた。彼らにとって、他国はその「駒」である。米国が飛車角なら、日本などは金銀どころか、一個の「歩」に過ぎないかもしれない。

 

中国経済を加速させたきっかけは、1994年、為替改革によって、人民ドルが大幅に下落したことである。

 

以来、景気の波はあった。政治情勢の変動もあった。それをものともせず、中国経済は大きな変貌を遂げ、台湾商人は巨富を手に入れた。その主たる原資は「土地取引」にあった。

 

その莫大な利益は台湾に還元され、台北市・新北市内に、にょきにょきと高層マンションが建ち並び、夢のような地下鉄網と駅ターミナルが一気に出現した。

 

そして有り余るカネをもって、台湾人も中国人も、世界中にぜいたくツアーに散っていった。

 

2018年中に出国した台湾人はのべ1,664万人。全人口が2,300万人であるから驚異的な数字といわなければならない。台湾人ツーリストが海外で支出する観光消費は三兆円に達するといわれた。

 

台湾人の平均賃金は、日本人の半分なのに、どうして年に何回も家族連れで日本旅行できるの? 多くの日本人が疑問を抱いた。

 

彼らの収入源は、月給などではない。

 

謝金河は、この三十年、「台商」は工場やチェーン店の進出によって、必ずしも営業上の利潤を得られなくても、土地の増値によって巨大な収入を得た。中国経済発展の最大の恩恵を受けたのは、「台商」にほかならないという。

 

しかし、「大陸」の旨味はすでに食い尽くされている。土地の取引も、世界と同じ水準になってしまった。そこに米中対立や、コロナ感染、競争の激化により、鴻海(ホンハイ)などの経営利益も20年前の水準に戻り、本業に限ればNT$20億元の赤字だという。

 

謝金河はすでに、中国は宝の山ではなくなった。過去30年の「台商」成功モデルは過去のものとなった。「阿里巴巴」「京東」「騰訊」といった中国地元の企業が圧倒的な実力を発揮しはじめた。「台商」は「不進則退」(前進しなければ後退しかない)。「面臨大淘汰賽!」(生き残りをかけた蹴落とし合い)の修羅場に直面しているとする。

 

このように大陸進出を「西進」という。現在の蔡英文政権が「南進」政策を掲げるのも、必ずしも政治的な動機のみによるものではない。こうした経済的必要性にも迫られているといえる。観光面でも、中国からの団体客ばかりに頼ってはいられない。東南アジア・南アジアのツーリストに来てもらわねば、これからは業界が成り立たないのである。