音楽室


黒いグランドピアノ
少し黄ばんだ軽い鍵盤
裏地の紅いサテンのカバー

大きな窓から見下ろす
下校時間の昇降口
少しだけ離脱感

こんな小さな世界から
どうしたって抜け出すことはできないし
心の底から抜け出したいと
思っているわけでもないけれど

彼の掌が迫る
押し出そうとするみたいに
私の胸に触る
ベートーヴェンがみてる