あとがき 

 本句集は前句集『血族』につぐ私の第二句集である。平成九年から平成十六年までの八年間の作品のうちから二百九十六句を収めた。この句集を編むに当り、高野ムツオ先生の御指導を受け、跋文を頂戴できたことは誠に光栄であり望外の喜びである。ありがたうございました。これも「小熊座」とめぐりあへたからである。それは俳句復活後、探し求めつづけてきたものとの決定的な出合ひであった。一方的な物言ひにすぎないが、この出合ひがあったから、少なくなった残り時間を精いっぱい生きて、俳句に執念を深めることができたのである。せっかくの残り時間だから今までにも増して、名もなき鳥獣蟲魚の声にも耳を傾けたい。「一寸の虫にも五分の魂」といふなら「五分の虫には二分の魂」がある。それを大切にしたい。     

 書名はトキ(鴇)の学名を平仮名書きしたものである。日本を象徴する学名をもつこの鳥類は特別天然記念物、国際保護鳥でもあった。このトキを絶滅させてしまった事実も、種が絶滅するといふ意味の重大性については無知にして関心を示さなかった国も共に、あの学名以上に日本を象徴してゐる。装幀には孫日名子(五歳時)の作品の部分を無断借用した。     

 本句集上梓にあたり、今回も邑書林の島田牙城氏のお世話になった。厚く御礼を申し上げます。      

  平成十七年葉月

                                                土屋 休丘