春が過ぎ去り初夏を迎えた西山の小塩山十輪寺 へ向かいました。
山門のすぐ傍には、大聖寺門跡から分けられた光格帝命名の『雲居の鶴』という杜若が可憐に咲いていました。

参詣の方も多く来られていて、初夏の瑞々しい賑わいが感じられました。
 
また、5月は業平忌がされることから、在原業平卿を中心とした御朱印を授与されておられました。
 
5月限定 在原業平卿

墨流し(マーブリング)御朱印
地蔵菩薩御真言(オンカカカ・ビサンマエイ・ソワカ)

十福ノ四 寿命長遠(5月)

延命殿(5月)

在原業平卿(業平忌)御朱印

業平忌御詠歌上の句
唐衣 着つつ慣れにし 妻しあれば

業平忌御詠歌下の句
ほるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ

この上の句と下の句は五七五七七の頭を取るとかきつはた(杜若)となり、まさに5月の歌となります。
上の句の妻しあれば、下の句の旅をしぞ思ふの強助詞の『し』は無理に訳さなくてもいいのですね。
唐衣着つつ慣れにし妻あればはるばる来ぬる旅をぞ思ふ
だったらなんだかただの平易な文章になってしまいますね。
強助詞『し』が2個入ることで強調にしかならないのですが、とてもバランスがよくなります。

ちなみに当山の愛猫『序音』ちゃんですが、東京における写真展で大きいパネルになっているそうです。
http://nekostamp.jp/においては、ラインのスタンプ(右上のありがとうございますという紅葉が背景の猫)にまでなっていて序音ちゃん目当てで来られる方もおられるのだとか。
 
また6月もお伺いしますね。
 
さて、次にお伺いしたのは、勝林寺 です。
こちらは繁忙であったであろうゴールデンウイークを避けてお伺いしてみました。
最近では最早珍しくはないのですが、メディアの取材を受けておられました。
 
初夏と子供の日の御朱印を受けて参りました。
 
初夏朱印『毘沙門天(下藤)』


初夏朱印『和敬(下藤)』

わけい 和敬
正しくは和敬清寂と表現し、千利休が茶の湯の根本として据えたとされています。
和敬だけが江戸時代に茶道における主客の考え方として独立してしまいますが、四諦として四字で一義となります。
和 は、自らと相手が調和して相互に楽しむ心。
敬 は、自らは謙虚に律し、そして相手を敬い譲る心。
清 は、澄んだ清らかな心、清められた道具や茶室。
寂 は、侘び寂びの心。
 
元々は、村田珠光が将軍足利義政に茶の心を尋ねられて答えた言葉であったのを利休が引用し、「今茶之道四焉、能和能敬能清能寂、是利休因茶祖珠光答東山源公文所云」として、茶道の基本としたとされています。
こうして禅の精神が茶道に取り入れられたのですが、お互いにもてなす側ともてなされる側と立場は変われども相手をお互いに思いやるという、正に現代の我々に足らない部分が茶の湯の世界では大切にされているのですね。
 
初夏朱印『却来(下藤)』

きゃくらい 却来
正しくは向去却来と表現します。
向去が、若者が俗世を離れ修業に入ることを差し、却来が、修業を終え達観した老人が俗世に戻ってくることを表すようです。
転じて、悟りの境地に達した者が一切を放下して初心に立ち戻るという意味になるのだそうです。
こちらは、室町時代初期に活躍した能の観世流の始祖である観阿弥の子世阿弥が能学に取り入れた禅語なのだそうです。
世阿弥は能の演者に位を九つの位に分け、その位ごとの目標などを定めたり曲目の順位付けを行うなど、具体性を持って能を大別したことが後世評価されているそうです。
具体的には、上三花(妙花風、寵深花風、閑花風)、中三位(正花風、広精風、浅文風)、下三位(強細風、強麁風、麁鉛風)と九位を三つに大別したようで、『却来』は至上の芸である上三花を演じることができる達人が下三位を演じることで、より味わい深さや広がりが出ることとなり伝統的な芸能となっていくのです。
禅の精神が能に活かされているのですが、簡単な仕事だから、とか、誰でもできるからなどと考えずに、敢えて熟達者がやってみることで、新しい発見があり意外な改善に繋がったりすることを考えると、こちらも現代の我々に通じるものがありますね。
 
子供の日朱印『善膩師童子』

そろそろお腹が空いてきたのですが、大切な日でしたし、テーマは“燻製”に決めて、山科にある評判の 燻製マーケット に伺いました。
元は大阪で移動式の燻製店をされていたそうなのですが、実店舗に移って営業をされるようになったそうです。
小さな可愛らしいお店に入るとスモークの良い香りが漂ってました。薫製を堪能すべく燻製づくしのパスタランチとお昼限定の燻製全種盛りを注文。テーブルに着くとちょっと珍しいチョコレートやナッツの燻製が。程なく燻製11種類が乗ったプレートが目の前に。
定番のチーズや卵、鴨やソーセージ、鯖や鮭に初めていただくたらこや枝豆などなど。どれも旨味が凝縮されてて良い薫りがしました。
燻製たらこ&クリームチーズと燻製ミックスナッツの蜂蜜漬けの乗ったバゲットを添えたトマトソースのパスタの上にも燻したベーコンが乗ってたし、燻製マヨネーズを掛けてもまた違った美味しさを楽しめました。
大切な日に期待通りに燻製の美味しさを心ゆくまで堪能できてとても良かったです。
 
そのまま東へと移り最後は、長等山園城寺(三井寺) です。
西国三十三所草創1300年第10弾での訪問です。
その記念ということで、4月1日から5月14日までの間で、秘仏で重文の愛染明王像や毘沙門天像の特別開扉がされていたのですが、生憎間に合いませんでした。
2014年10月21日にお伺いした時と変わったなぁと思うことは、かつては黄不動尊の御朱印は山内唐院大師堂において黄不動明王が特別公開されている10月29日に授与されていましたが、同じく山内の別所微妙寺において通年授与になったみたいですね。

草創1300年記念
西国三十三所霊場第14番札所 大悲殿

草創1300年記念
西国三十三所霊場第14番札所 御詠歌
いで入るや 波間の月を 三井寺の 鐘のひびきに あくる湖




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