東日本大震災から一ヶ月が経とうとしています。

震災後、スーパーマーケットのいくつかの食品カテゴリーの棚からは商品が消えました。

特に顕著であったのはヨーグルトと納豆です。

ヨーグルトは、東電の()計画停電の影響です。製造工程内に「発酵」という工程がありますので、発酵途中に停電になると菌が急増してしまい、売れなくなるので停電を避けねばならない。東電からの「停電の回避」が毎日突発的だから、製造シフトを組めず、人手の確保もできない・・・このような事態が起こっていたのです。

納豆は、工場が集中していた茨城県が被災、多くの工場の製造ラインが損壊しました。また、パッケージ包材に使うポリエチレン・ポリプロピレンの原料工場が被災で原料を製造できなくなり供給ストップしました。特に後者、「包材パニック」は、納豆のみならず、あらゆるカテゴリーの食品供給不足要因となり、いまだ解決していません。

包材パニックで各メーカーが欠品を頻発する中、ほぼ通常通りの供給量を満額供給できているメーカーもありました。なぜ、できたのか?そのメーカーは、中国の包材工場にも主要な商品の包材の金型を置いていました。震災直後、包材の供給不安を予見してすぐにその中国の工場に資材を発注、2週間後には日本に包材が到着。小売はこのメーカーから商品を仕入れるしかありません。このメーカーの営業マンは、商品の供給と引き換えに、今期の先々の契約に関しても優位な条件を盛り込むことができました。

この事例は「複数購買」のメリットをうまく活かせた例ですね。


「おとりくみ」「複数購買」どちらがよいのでしょうか

どちらもメリットあります。「おとりくみ」は、1社から集中的に仕入をすることでコストその他の付帯条件を引き出し、優位な仕入をすることができます。仕入量がそれほど無い企業でも、1社に集中すればそれなりのコストで仕入が可能です。ただ、その1社に何かがあった場合、ただちに商品供給ができなくなってしまいます。そのリスクに覚悟をもつことが必要です

そのことが悪いと言っているわけではありません。物事には良い面悪い面必ずありますから、その会社にとってどちらがよいかを理解して選択していれば問題ないのですが・・・・リスクを理解し覚悟していない企業がとても多いように感じます。それでは、従業員さんを不幸にしてしまいます。

今回被災された、石巻の魚加工のメーカーさんは、三陸の海からの1社購買です。それが運命で、それを受け入れた上で経営されています。社長さんからパートさんまで、そのことを受け入れて仕事をしています。



そもそも 人は、ノーリスクで生きることはできません。

何かを選ぶということは、何かを捨てるということです。

そのことを、理解し、利害関係者にも理解してもらいながら、経営することが、大切だと思います。

企業の業績が取り上げられる場合、常に出てくるのが「昨年同月比」という指数です。

例をあげると、巷では2010年度の既存店売上が昨年同月比で100を割り込んでいる月が目立ったユニクロの実績をみて「斜陽に差し掛かった」という声もあります。


大西宏さんもこのような記事をかいていますhttp://news.livedoor.com/article/detail/5182391/


この大西さんの記事で用いられている指数もそうですが、皆さん売上を評価するとき、なぜか「前年比」とか、「前月比」といった指標を使いたがります。

これは、マスコミ経済情報の主たる消費者である金融投資の関係者、つまり「短期で株を売り抜けている投機家」が、短期の上下だけに関心を寄せているからです。  


もっと重要な「絶対値」を見ている人は意外に少ないと思います。


年間8000億円あるユニクロの既存店売上高や、16%の営業利益率はどのように評価されているのでしょうか。それを踏まえたうえで、ここ10年間彼らはなぜ伸びたのか?また、数回の昨年割れの原因は何だったのか?これを理解して、はじめて昨年同月比を検証できるのです。


食品メーカーにおいては、小売業の方々とデータを有し、「カテゴリーマネージメント」に取り組む機会もあろうかと思います。

その際、まずは現状の販売点数と売上高への評価をしっかり行うことが大切です。いまの個の売場の販売力が、高いのか、低いのか。それを実証したうえで、サブカテの分析にあたってゆくことが大切です。


なんでもかんでも「まず昨年対比」は、事故の元です。



小売業側から「取り組みメーカーになりましょう」といわれたことはありませんか?


表向きには、目標を共有し、達成するためにいろいろなことをオープンにして取引しましょう、御社のシェアは引き上げますよ、ということです。


ウラに潜んでいるのはバーター取引です。商品Aを採用するかわりに、商品Bは安くしてください。リベート協賛も引き上げてください、というような価格交渉が待っています。


ちゃんと原価計算して、会社全体の利益構造を理解した上で契約してゆけば、バーターをやること自体は問題ありません。


気をつけなければいけないのは、バーター契約したときの前提条件が忘れ去られてしまうことです。

Aを採用してもらうかわりにBを安くしたのに、時間とともにその前提条件が忘れ去られ、棚からAがカットされて、安く契約したBと、重いリベートだけが残ってしまった、ということが起こるときがあります。


これは取り組みではありませんね。


バイヤーとの口約束で「取り組みメーカーになりました」と言っていてはこのようなしっぺ返しを食らいます。それは取り組みではなく、カモにされているだけかもしれません。

そのようなことを防ぐために*

①バーター契約の際、両者の管理職同士で前提条件を確認する

②半年に1回程度(できれば四半期)は、管理職同士で商談の場を設ける

③人事異動が起こったときは、前提条件を引き継いでもらえるよう、必ず確認に行く

ここらへんがスムーズに出来ないのであれば、「取り組みメーカー」ではありません。


バイヤーが原価を引き出すための「セールストーク」に乗せられているだけでしょう



どの業界でも価格競争は激化していますが、参入障壁の低い食品は特に競争が激しくなっています。値下げ合戦をくりかえし、疲弊して破綻する企業も少なくありません。


ここで大切なのは「原価への理解度」です。戦略的原価設定を発動するときは、実際に売っている人がその原価の組み立て と 販売戦略 をリンクさせて理解しておく必要があります。



商品の原価は、原材料費と諸費用を足したものです。

経営者や開発者だけでなく、少なくとも売る人は、この「諸費用」の考え方を理解しておく必要があります。


諸費用は、変動費と固定費に分かれています。


変動費とは、「その商品を製造・販売するにあたって必ず発生する費用」です。その商品の製造するための人件費や物流費などがこれにあたります。


固定費とは、「その商品を製造・販売しなくても定額発生する費用」です。家賃や製造ラインと関係ない人件費や減価償却費などがこれにあたります。商品を売ることで会社全体を運営するわけですから、当然これらの固定費も原価に配賦せねばなりません。


しかし、価格の要求が厳しい場合、時には固定費から削って原価設定を下げることがあります。実際にキャッシュが出て行くことの無い減価償却費は見直せないか、間接部門の人件費は外せないか、家賃はこの際対象外にしよう・・・・など。ケースバイケースで最良の方法をかんがえます。

価格の要求が厳しい、でもどうしても売らなければならないとき、が営業マンにはあります。

そんなときに、原価の組み立て方を理解していないと、会社の利益構造はおかしくなります。


経営者だけが分かっていても、実際に売る人が理解していないとひとつひとつの契約内容にズレが生じ、気づいたときには手遅れになっている場合があります。

売る人への原価計算教育は、大切なことです。


食品メーカーは、コストを考えると、中国製造に頼らざるを得ない状況が長年続いてきました。


人件費も安いし、日本から近いので物流費も安くあがります。野菜など、資源も豊富なので、計画生産しやすい面もあります。



しかし、その中国依存を減少させる動きが起こり始めました。

強く叫ばれている「チャイナリスク」は2点、①中国内の人件費アップと、②中国内消費量のアップにより、今までのような安い価格で商品を製造してもらえなくなる危険性ですね。




現状、今までのような安い給料で働く工員を確保できない工場がたくさん出てきています。

※ただし私見ですが、中期的にみると人件費問題は改善されるように思います。(商品にもよりますが)  中国の食品工場をみると、特に加工度の低い製品の工場は、機械化が遅れています。人海戦術で製造しています。もし本当に近隣諸国とのコスト競争力が落ちてきたら、まずここにメスを入れ、コスト優位性を確保すると思われます。従って、人件費アップは中期的に見れば、さほど問題ではないと思います。




しかし、中国内需は増えている。中国経済が成長して食生活が豊かになれば 当然中国内で消費します。輸入規格に厳しい日本に安く売るより、中国の富裕層に販売したほうがよっぽど儲かるし気楽です。

よって日本のメーカーにおいては、買い負けによる原料不足、ひいてはコストアップが起こりはじめています。


ニチレイは、中国に合弁会社を設立し、原料確保に動いています
http://www.logi-today.com/?p=7476












既に商社やメーカーは、中国と同様な品質を求めてアセアン諸国や中南米にアタリをつけはじめています。
原料自体は中国のものより良いものがたくさんあるようです。

神戸物産はアフリカに目をむけています

http://www.logi-today.com/?p=7318










国産食材についても、同様のことが言えますね。昨年までは さといもやほうれん草など、中国に比べて2倍以上の価格がついていましたが、その差は確実に縮まっています。歩留まりと工程を見直せば、あと数年で中国産も国産も同じような価格になる場面も大いに想定できると思います。



国産食材を戦略的に活用する時期かもしれませんね。








リンガーハットも国産野菜で成功しています

http://company.nikkei.co.jp/news/news.aspx?scode=8200&NewsItemID=20110113NKM0048&type=2























ミツカンが旭松食品の納豆事業を買収します。旭松食品の営業権と商標権を取得し、関西以西の販売を強化・・・これで、納豆業界はタカノフーズとミツカンの二大メーカーの独占に近い構図が浮かび上がってきます。


昨年度民事再生となったのくめ納豆に続き、歴史ある納豆メーカーがまた1つ、大手に事業譲渡となりました。




現状を見る限り、納豆は、メーカーにとって利益の出ない品群です。


いわずもがな 納豆は卵と並んで特売商品の代名詞。


しかも、卵の98円特売などは、小売が負担して逆ザヤ特売をしているのが普通ですが、納豆はそうではありません。98円特売でも30%は値入をハメている場合が殆どです。


これは、メーカーの過度なシェア争いの結果に他なりません。原材料に対する適正な付加価値を商品の売価に転化できていないということです。


日配品の中でも、納豆は特売比率のきわめて高い品群です。それだけ、消費者が納豆に求めるのは「安さ」だということになります。




そのような中で、大手以外の納豆メーカーはどうすればよいのでしょうか。



「ブランドをつくる」

豆にこだわり、タレにこだわっておいしいものを高く売る・・・・・。


それも1つの方法で、決して間違ってはいません。しかし、時間がかかるのと、参入障壁が低いので、難しい方法です。特に伝統食品は新たなブランドイメージを確立して 市場に刷り込むのに相当な労力を要します。


昔、大手納豆メーカーの方が言っていました「納豆でブランドを確率するのは困難だ。価格訴求が激しすぎてブランド育成ができない」

「高く売れる」ブランドで 「シェアすること」 は難易度が高い、という意味です。くめ納豆は比較的ブランド力があった、といわれますが、結局価格競争の波に飲まれてしまいました・・・・





そのような中で、私は、狙う市場を絞ることを提唱します。たとえばエリアなら・・・・



★エリアを絞り、ナンバーワンになる。


納豆に限らず、日配系の中小メーカーがコストも含めて大手より優位に立てる数少ない戦略の一つです。


●物流効率 

●エリアでのネームバリュー

●地元由来のプロモーション




今後、大手小売も含めて強化する傾向にあるのは、「エリア別MD」です。

各エリアに「超地元密着型」で勝っている小売業がどんどん現れています。ここに対抗してゆくのが今年以降の大手小売業の戦略のひとつです。




メーカーも、地方の中小企業にしかできない強みに集中し、磨きこむことが必須です。









みなさんはじめまして、yachihideyukiと申します。


私は食品メーカー支援事業 を営んでいる30代半ばの男です。



今までは、gooでブログを書いてましたが・・・・

●イスタンブールへの道

http://blog.goo.ne.jp/yachihideyuki


機能がなかなか進化せず、メンドーなことも多いため、アメブロに引っ越してきました。



私は、食品メーカー勤務10年、コンサルティングファーム勤務3年 を経て独立、

食品メーカーの 経営効率改善 と 新規事業立上げ に特化したコンサルティングを行っています。


食品は需要が安定している反面、新しい試みによる飛躍的成長が難しいと思われがちです。

たしかに古い慣習や理念が強く、新しいものを拒絶する傾向は否めません。


しかし今日、食品メーカーをとりまく「競合他社」は、さまざまな手法でシェアの侵食を図ってきます。



●格安輸入品

●ネット通販

●小売PB

●産直(中抜き)

●M&A



・・・・・・・他にも新たな脅威がたくさん生まれてきています。今までのように、楽には勝たせてもらえない

時代になることは間違いありません。



では、具体的には何をしてゆけばよいのか・・・・・?





このブログが、皆様のヒントになれば幸いです。




どうぞ、よろしくお願いいたします。