教職免許を取るのに必修な科目があります。
合唱もそのひとつ。
その授業で『ふるさとの四季』という作品を取り上げています。
唱歌を季節ごとに並べて、メドレーにしたもので、合唱経験者ならおそらく、歌ったことあるよという方も多いのではないでしょうか。
唱歌。おそらく昔は、子供の頃に誰でも歌ったことがある歌。
でもだんだん、教科書からも姿を消して、今の学生たちにとっては「歌ったことない」どころか「聴いたことない」という曲も年々増えてきてるようです。
だからこそ、これらの曲は知ってから卒業してほしい、知っておいてほしい、伝えていってほしいという、先生の想いがあり、毎年このクラスでは課題曲として取り上げているそうです。
私が小学生のころ、教科書に「朧月夜」がのっていて、とても好きだったなぁ。
小学生がふだん使う言葉ではなく、ちょっと古風な感じの詩。だから、意味はその当時はふんわりとしか分かってなかったかもしれないけど、きれいな響きがするこの詩を歌うことや口にすることが、子供心にも心地よいなぁと感じてました。
これが作られたのは大正3年。
大正3年というと1914年。
西洋音楽史で近いところだと、
オペラ『薔薇の騎士』の初演が1910年
バレエ『春の祭典』が1913年
もうひとつ、とても好きなのが『夏は来ぬ』
こちらはなんと、もっと前で明治29年。
つまり1896年。
ブラームスがなくなった翌年であり、
マーラーの交響曲第3番が作られた年。
私の大好きなオペラ、ヴェルディ『ファルスタッフ』初演はこれより3年前の1893年。
明治維新とともに西洋の文化が積極的に取り入れられるようになり、音楽教育においても最初は「蛍の光」や「仰げば尊し」のように外国の曲に日本語の歌詞をつけて歌うところから始まり、だんだん日本オリジナルの曲が出てきました。
入ってきたばかりの西洋音楽や、これらの新しくうまれた唱歌を、当時の人たちはどんなふうに聴いていたのだろう、どんなふうに受け入れられていったんだろう、というのを考えるのはとても興味深いです。
100年以上前の曲だから、この詩に描かれているような景色はリアルに体験したものではないけど、それでもなんともいえない懐かしさを言葉からも音からも感じるのは、なにかDNAに組み込まれてるんでしょうか
これからますます、この曲が作られた年代と学生の年齢との差は広がっていくのだけど、なんともいえない懐かしさや曲の魅力は彼女たちにも伝わってるであろうし、それをまた次の世代に繋いでいってくれることだろう、と信じています。