最後の「ああでもなくこうでもなく」 橋本治 | 今、考えていること

最後の「ああでもなくこうでもなく」 橋本治

最後の「ああでもなくこうでもなく」―そして、時代は続いて行く/橋本 治

 ほどんどテレビを見なくなったので、芸能関係ネタ、とりわけて、お笑い系は全くわからない。別に、わからなくても困ることはない。
 タモリのお昼の番組を見なくなって3年ぐらいになるか。


 テレビもタバコと同じで、ないならないで、全く困らないということがわかる。家に帰れば、必ずテレビを見ていた時というのは何だったのかと、今は思うが、その時はテレビが生活の一部だったのだ。

 最近の世の中でおもしろいのは、『政治』である。それも日本の政治。そのおもしろさとは、橋本治さんの言葉を借りれば、『政治が日本で一番時代から取り残されているものだから』である。
 
 思い起こせば、2001年小渕さんが総理在任中に亡くなって、森喜朗が4人組の談合で総理になるが、史上最低の支持率であえなく辞任。政界再編、政権交代の芽があったが、そこに現れたのが、自民党にとっては救世主の小泉さん。『自民党をぶっ潰す!』と言って、自民党を救ったのである。この時もおもしろかった。


 人気の小泉さんが任期満了で、その後を継いだのが安部晋三さん。確かに小泉さん時代は格好良かった。若さと毛並の良さが、韓流を好むおばさま層に持てたのだ。
 安部さんにとっては悲願の総理大臣の席である。父親は、次代の総理候補と言われながら、プリンスのまま総理になる前にこの世を去った。
 しかし、安部さんには荷が重かった。器ではなかったのかもしれない。
 そして後に登場したのが、福田さんである。しかしその福田さんもあっさり放り投げ、吉田茂の血をひく麻生太郎さんの登場となった。
 
 周りが麻生さんを祭り上げたのは福田さんが嫌がった、解散という儀式のためである。ところが、表向きは、未曾有(みぞう)の経済金融危機のためだが、解散が棚上げされてしまった。
 もちろんその時解散していれば、かなりの確立で政権は交代していただろうが、世の流れは確実に『解散』に傾いていた。
 政治のおもしろさはここからである。


 麻生さんは、端から解散する気などなかったのではないか。少なくとも、今は、どんなに世論調査で支持率が低かろうが、9月の任期満了まで辞める気はさらさらない。もちろん、自民党総裁を降りる気もない。

 そこに降って沸いてきたのが、民主党党首、小沢一郎さんの公設秘書の政治資金規制法違反容疑である。
 官僚と政治家、そして司法がそのバトルに加わったのだ。


 戦後政治の一大エポックは田中角栄が福田赳夫と争って佐藤栄作の跡を引継ぎ、総理大臣になったことと、その田中角栄がロッキード事件で現職の総理大臣として逮捕されたことである。


 小沢一郎さんは、田中派の大番頭、金丸信の秘蔵っこだった。西松建設の繋がりもその時からずっと続いているのである。


 ついアメリカと比較してしまうが、バラク・オバマはお馬鹿なブッシュの共和党から民主党に政権を奪い返した。それでは、日本はひょっとしたら、ブッシュよりもお馬鹿な麻生太郎さんの自民党から民主党は政権奪取できるのだろうか。


 いや、日本の政治はそうじゃない。自由民主党というのは、1955年の保守合同で、自由党と民主党がいっしょになってできた党である。小沢さんも鳩山さんも元はといえば、自由民主党の出身である。
 つまり、政治の世界は何ひとつ変わってはいないのだ。


 『政治は最後にやってくる。』


 本当のバトルはこれから始まる。それは政治家と官僚と司法の権力闘争である。それは三国志なんかよりよっぽどおもしろい三権分立じゃなくて、三権バトルである。




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