見た瞬間からそれとわかる、軽くて重い、しんとした型だった。
通り過ぎるのがもったいないので、近くのベンチに座り暫く見ることに。コタローを膝に乗せて見つめていたが、紳士はこちらを知ってか知らずか、ひたすら同じ型を飽きる事なく何十分も続けていた。
岩の上に降り立った野生の鶴が、人など気にせずに毛づくろいをするように、その型は地味に美しく続いた。
最初は、終わったら話しかけてみようかななどと考えていたが、だんだんそんな必要はなく、ただその動きを、敬意を持って拝見すればそれでいいんじゃないかと、考えが変わった。
コタローの鼻の周りに蚊が集まって来たのを潮に、その場を後にした。
それにしても、あれは多分達人と呼んでいい人なんじゃ無かろうか?
こんな近くにそんな人が普通にいるとは、やはり世の中、広いし捨てたもんじゃないなー、などと思いながら、老いた愛犬コタの乗るベビーカーを押して帰るしょざんであった。
