寒い日が続きます。体を温める道具といえば、こたつ、ストーブ、湯たんぽなどがありますが、昔の人は、温石(おんじゃく)という石を温めて使っていたようです。
諸国より出す。色かたち一ならず。火をもって焼き、病ある所をおしあたたむる石なり。(『雲根志』より)

延喜式では、温石の(唯一の)産地として紀伊国が記載されています。
温石 延喜式諸国貢薬中に紀伊国温石一百二十斤とあり。今、名草郡大野荘藤白峠の産上品なり。那賀郡上倉荘上三毛村の産下品なり。一説に温石は熨病の用ありて服餌の方なし。(『紀伊続風土記』より)

医療が発達していない江戸時代では、痛む場所を直接温める温罨法(おんあんぽう)による治療がよく行われていたようですが、現代でも、肩こり・腰痛などの対症療法として体を温めることがあります。
そして、現在の和歌山県では、お風呂で体を温めるための医薬部外品「入浴剤」が盛んに製造されています。体を温めて、寒い冬を乗り切りましょう。

〇 参考文献
[1] 木内小繁重暁 著 "雲根志. 前編1-2巻" 国立国会図書館デジタルコレクション
[2] "紀伊続風土記. 三編(一之巻)" 国立国会図書館デジタルコレクション