父は無口だった。
オレはたぶん遺伝だろう。
大抵の用事は母に話していたが、
「そういう大事なことはお父さんに相談しなさい」と時々言われていた。
父と話すのは緊張した。
滅多に怒らないが、思い切りひっぱたかれて耳がキーンとなった記憶もある。
威厳はあった。
体格もよく、逆にオレは小さかったせいもあり、逆らったことは一度もない。
小学校中学年だったろうか、
朝、面白い眉毛のシールを顔に貼り、母や姉を笑わせていた。
父はちょうどお茶漬けを食べていた。
オレはその顔を父にも見せた。
ブ~ッ!
父は吹き出し、食卓は飯粒だらけになった。
父は何も言わなかった。
気まずかった…
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