入学式を終え、黒服軍団との遭遇によりまずは、この不良の名門校としての洗礼を受け、クラスに分かれた。1年1組・・・。
 

 担任は誰か・・・その担任いかんで中学生活は大いに変わる。
 

 できれば若い美人の先生がいい。
 

 教室の窓を見れば桜がきれいに咲いている。
 

 教室のドアが開き、春らしい心地よい風と共に現れたのは、そう!入学式で見たあの美人の先生・・・「やった!」心の中でクラスの男子は、心の中で皆、叫んだに違いない。
 

 だが、その春らしい風が教室を舞うのは、ほんの一瞬であった。
 

 再度、教室のドアが開き、現れたのが体格のいい角刈りのジャージ姿の男。一瞬でわかった・・・こいつ柔道やっている。
 

 片方の耳がつぶれてる・・・。
 この男こそ担任だと解った時、教室全体で大きなため息・・・45人のため息とはすごい。
 

 バラ色、いや桜色と思われた中学生活は、灰色に変わった瞬間である。
 

 この担任・・・35歳独身担当教科は国語・・・似合ねえ~!
 

 普通その風貌ならば、体育でしょ!
 

 そして、柔道部顧問でもあった。
 

 実は、YABは親父からある使命を受けていた。中学では、柔道部に入ること・・・・。
 

 数日後、柔道部への入部すべく道場へ赴けば、「居た~!」黒服軍団が!
 

 後からわかったことだが、この柔道部こそが黒服軍団のエリート中のエリートの巣窟の場であったのだ。
 

 黒服軍団はいくつかのグループがあるが、それを束ねてるのがこの柔道部である。
 

 いきなり本社総務部秘書課役員担当に配属されたようなものである。
 

 黒服軍団が、柔道着に着替えて白服軍団となる。
 

 そして現れたのが、わが担任である顧問・・・手には竹刀・・・。「なんでやねん、柔道部でしょ」
 しかし、柔道部顧問のくせに、竹刀を持つ姿が似合っている。
 

 この顧問の前では、黒服軍団も猫のようなものであった。
 

 当時校内暴力が、社会問題になりつつあって、当然わが中学でも日常茶飯事に「黒服軍団VS教師」の場面があった。
 

 しかし、この先生が、現れると大抵その場は収まるのである。
 

 黒服軍団の幹部は柔道部・・・その顧問であって彼らを束ねているからである。
 

 まさに影のドン・・・。たしかに黒服軍団のドン・・・柔道着の帯は黒かった!この先生こそが、校長を上回る、ラスボスなのである。
 この環境下のもと、意外にもYABは不良にはならず、真面目なごく普通の中学生活を3年間過ごせたのは、この教師のおかげであった。

 

 そして少々柔道もできたYABは、この先輩たちに可愛がれたおかげで、黒服軍団からも、かつあげや脅されたり喧嘩に巻き込まれることもなかった。むしろ一目置かれていたのだ。
 

 そしてこの名門校において黒服軍団の恩恵を受けつつ、この担任のおかげで、中学生活は「安心・安全」におくることができたのだ。

 

 彼はYABの担任として、親父に次ぐ師匠でもあって、そして「恩師」であった。
 

 しかし・・・それはある巨大なる影の策略と陰謀の中、仕組まれたことであった・・・真実の奥に在るもうひとつの真実・・・。