奈良には名門校がある。
その名はT学園・・・私立の名門校である。
中高一貫で東大、京大・東大を目指すわけだが、YABも親族一同の大いなる期待にて小学校3年からは、いわゆる受験戦争へと徴兵させられたのである。
学校から帰宅して、塾に行き、帰宅後、宿題、予習、復習を学校の分だけでなく、塾の分も・・・。
そして、当然のごとく、父の柔道の指導もあるわけで・・・。
小学校3年にして、寝るのはいつも深夜1時である。
小学校4年にしてすでに小学校6年の勉強をしていたのである。
通っていた塾はスパルタであり、男子は、毎回されるテストで2問以上間違いがあると、分厚い問題集で、頭をたたかれるというパワハラ、女子は、なぜかくすぐられるというセクハラであった。
今の時代であれば完全アウトな塾・・・。
小さな塾であったが、地元では密かに有名な合格率の高い塾だった。
小学校5年になるともう授業が復習になる。6年になると授業の意味もなくなるわけで、1教科のノートも1週間で使い切るという驚異。
おかげで、右の中指には、その名誉として大きなペンだこができて、それは今でも健在である。
実は父も母も母の姉妹(4人)すべてN高校(当時はN中学)出身であり このN高校も県下の公立高校では1番なのだ。
実は、叔母の子どもたちは全員女子!そう!いとこも全員女子!
なんとも女系のDNA強すぎなのだ!
また、みんなYABより年上で、勉強ができる。
そしてYABが小学校6年のときはすでにそのあたりの名門中学といわれるところに入学していたのだ。
YABは、本家の紛れもない跡取りであり、そのかけられる期待とプレッシャーは、半端ないのだ。
祖母と母の決まり文句がある。
「お父ちゃんみたいになったらあかんで!」
男の子というのは父の背中を見て大人になっていくわけだが・・・。
それを真っ向と否定するのだ。
哀れな婿養子という存在・・・。
父のようにならないために勉学にいそしむ?
たしかに父のように、頭が剥げてきてスキンヘッドにはなりたくなかった。
小学校6年の正月・・・。
親戚一同が我が家にきて恒例の正月祝い・・・。
こういう場でも、席順はあるのだ。
上座は、祖母・・・絶対権力者!その横は、僕・・・跡取りだから・・・。
あとは、母や叔母たちが座る・・・・。妹やいとこは母や、叔母の横・・・。
そして、上座から遠く離れた席に父や、叔父たちが座するのである。
まさに、祖母の帝国である。男尊女卑ではなく女尊男卑・・・。
今思えば異常~!
まあ、6代目にしてはじめての男子誕生・・・うれしいのはわかるが・・・。
その席で、恒例のYABの将来についての会話・・・。
恐るべきその親族の計画と同時に降りかかる期待とプレッシャー。
正月だけでなく、何かと親戚の集まりでは同じパターン。
うんざりだった。
子供とは言え、男子であ~る!
親父や叔父さんらのグループに入りたいとおもうわけで・・・・。
でも、何の発言権も権利も与えられていないグループも・・・・。
複雑である。
小学校6年の正月・・・中学受験目前の正月・・・・。
恒例の正月・・・ヒートアップする期待とプレッシャー・・・。
重圧感満載の、YABへの声かけ・・・。
「あととりやねんからね~」
「ええ中学はいって、高校、大学行って・・・。」・・・etc
そんな我が家は、皇族でもなく・財閥でもなく、商店街のおもちゃ屋で~!
なにかの頭の中で音がした。声がした・・・。
1月4日の朝・・・YABは、お年玉を懐に入れて、家出した。