人々が幸せに生きている国など、

この世のどこにあるのだろうか。

 

後ろの帯にある言葉なのですが、五寸釘で打ち込まれたように突き刺されました。

貫井さんの新刊『ひとつの祖国』。

またまた凶器笑になりそうなくらいの厚さであります。

 

舞台は日本には違いありませんが、かつて西と東のふたつに分断されていた架空の日本が統一されてからのお話になります。

西日本には大日本国、東日本には日本人民共和国。

東西の大きな違いは経済力でした。

ドイツのベルリンの壁が統一のきっかけとなったワケですが、日本統一にはなったものの東日本の首都だった東京が、首都の座に返り咲くことはなかったのです。

 

そして統一日本の首都は大阪になり、関西弁が標準語と呼ばれ、東京の言葉は田舎者の方言と見做されるようになった上、さらに経済格差は埋まらないまま、統一から30年。

いくらがんばっても東日本人は西日本人のような生活は送れないということに気づいてしまい……。

それならまだかつての分裂国家の方がまだましではないか、と東日本独立を目指して武力闘争を繰り広げるテロ組織〈MASAKADO〉の動きが活発になっていたのです。

東日本人にとって西日本人並みの生活を送る手段は自衛隊に入ることのみ。

前置きが長くなっちゃいましたけれども、追われる立場と追う立場になってしまう二人の男性が物語の軸となります。

 

それが、東日本出身の一条昇と、西日本出身の辺見公佑。

二人が親しく付き合えたのはお互いの父親が自衛隊員という共通点からで。辺見の父親の東京赴任期間、一条一家が隣人となったのが一条一家だったのです。

親しくなったとはいえ二人のタイプは違っていて、体育系だった辺見は自衛隊員、学究肌だった一条は大学まで進学したものの、正規雇用の職は得られず、契約社員に。

それでも幼い頃の友情は続いていたのですが――。

 

「テロで何かが変わるなんて、あり得ない」と口にした一条。確かに辺見が知っている一条のままだったのに。

誘われた仲間内の飲み会に参加したことから、テロ組織と関わってしまうこととなった一条を、自衛隊特殊連隊の辺見は信じられない気持ちを抱きながらも追うことに――。

 

 

狭い日本です。西と東に分かれて、ということは考えたこともありませんでした。あたくしはこれでも西側の出身で、高校までは暮らしていましたから、東といいますととても遠く感じたものです。

分断って良いことは本当にないですよね。

現実に、狭いのに西と東に土地がまっぷたつ! となれば、『日本沈没』でしょうか。簡単に行き来できなくなっちゃいます。日本は島国ですから。

だとしても、今の日本は沈没寸前なのでは?と思えることばかりです。だんだん幸せに生きることすらできなくなっているこの国。そのせいか、貫井さんの『ひとつの祖国』は、ストーリーの中にあるセリフのひとつひとつが妙に突き刺さってくるのです。

 

 

本文の最後の方で、自称・名なしのゴンベちゃん(笑)のセリフがまるでリアル。ぜひここまで文字を飛ばすことないよう、たどり着いてくださいませ。

 

停滞してません? 今の日本って、みんな、死んだ魚の目みたいなどんよりした目をしているやないですか。希望を持ってて、毎日が楽しゅうてならん人なんて、どれくらいおるんでしょうね。百人くらい? 絶対千人はおらんでしょうね。絶望的な国やないですか


 

ということで、いつもの貫井さん作品同様、ぶ厚いですが1冊です笑

 

 

 

前に読んだ貫井さんの本『龍の墓』(当時は新刊)は、そんなに厚くなかったみたいですね。けっこうまとめてあったのに記事にしてなかったみたいで、反省です……。ちなみに2023年11月に出た新刊でこの月に読了してました。更新しようと思っていながらも、してないな、とつくづく感じました。

 

 

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まあ、すごく久しぶり。ずっと更新怠っていましたからね。