OyamaSeiichirosanAkaihakubutsukan

 

赤煉瓦造りの三階建ての建物〈警視庁付属犯罪資料館〉、通称〈赤い博物館〉。
ロンドン警視庁犯罪博物館――通称〈黒い博物館〉を真似て設立されたもので。
警視庁管轄下で起きた事件のさまざまな証拠品(凶器、遺留品など)や捜査資料を事件発生から一定期間が経過したのちに所轄署から受け取って保管・今後の捜査に役立てる、というわけです。
ここの館員は、年齢不詳の雪女のような(笑)館長と助手の二人だけ。
捜査一係だった寺田聡は、三週間前、強盗傷害の容疑者の男の自宅を捜索した際、持参した捜査資料を置き忘れ、それを容疑者と同居していた女にネットに公開されてしまうという大失態を犯したため、ここへ異動させられていたのです。美女館長の緋色冴子の助手として――



本の厚みはそんなにございませんが、5つの事件がかなり濃密です
書き下ろし(『死に至る問い』)を含む5篇で、未解決の事件がページからあふれてきそう……(笑)。
ちなみに、寺田さんの犯した大失態は、冴子さんの指示の元、捜査に勤しんでいらっしゃる間は大目にみるか、忘れてあげましょう(笑)。

本のタイトル『赤い博物館』は、掲載時『パンの身代金』のタイトルのようです。
赤、赤、赤……赤の大好きなあたくしとしては、異状に反応してしまうのです(笑)。
赤ずきんもんすたーリボン


ということで、五つの作品をちょろっといっちゃいます。
 

パンの身代金
自分が警察に入ったのは刑事になるため。
いつの日か、捜査畑に戻れる日が来ると願う寺田聡ですが、日々の仕事はといいますと――証拠品を管理しやすくするため、証拠品を入れた袋にQRコードのラベルを貼りとデータ入力。
館長になって八年になるという雪女・冴子と口を利くことはほとんどありません。
そして配属されて一か月。
冴子から捜査資料を読んで概略を把握しておいてくれといわれます。それは彼女がいつも捜査資料を読んでいたのは迷宮入り事件の再捜査のためだと知った聡は、助手として動きはじめ……

復讐日記
元恋人の麻衣子に呼び出され、高見はマンションに向かいますが、彼女はベランダから突き落とされたことを知り……
まだ麻衣子に未練のある高見は彼女を殺した犯人を突き止めるため、ノートに出来事を記すことにしたのですが。
それは――独力で彼女を殺した犯人を突き止め、葬儀のあった夜、犯人を殺害したという驚愕の内容で。

聡が読み終えたのは古びたキャンパスノート。
20年前、1993年に八王子で起きた殺人事件の証拠品は、死亡した被疑者が残したものだったのです。
冴子は被疑者の日記(ノート)にはおかしな点があるといい、「再捜査を行う」と続けられ、聡はひとり捜査員として指示に従いますが……


死が共犯者を別つまで
非番でドライブしていたら、すぐ前の車に居眠り運転のトラックが乗用車に突っ込んだところに遭遇した聡。
突っ込まれた乗用車の運転手に死ぬ間際、25年前の交換殺人を告白され、あまりにも具体的すぎる内容に驚きます。
亡くなった男の妻に25年前、1998年9月に周辺で殺人事件はなかったか尋ねると、資産家の叔父が強盗に殺される事件が起きていたというのです。
同じ「1998年9月」に発生した殺人事件は6件。この中に交換殺人が ――と再捜査がはじまるわけですが


五歳だった英美里が家族を失ったのは、幼稚園の年長組お泊り保育の夜。
留学経験もあり、賢くて活発な英美里の大好きな伯母も泊まりに来ていて、両親と共に燃えてしまったのです。犯人は叔母のストーカー男。結局、誰だったのかわからず、いまだ犯人はつかまってなく――

雪女から再捜査を命じられたのは、今から21年前の1992年のこの事件。
本田夫妻の自宅から出火し、焼死体となって発見されたのは男性と女性ふたり。

プロカメラマンになった英美里がファインダーの向こうで探している夢の光景「母と父と叔母とわたしと赤ちゃんがいる、あの懐かしい家」。実のところは……

死に至る問い
1987年…多摩川河川敷で24歳の男性の他殺死体が見つかった事件の証拠品と捜査資料を引き取りたいといってきた捜査一課。
今朝、同じ場所で、男性の他殺死体が見つかり、その26年前と状況が完全に同じで、同一犯の可能性が極めて高いと判断。
新たな被害者も同じ24歳の大学院生。
もしも同一犯なら、なぜ26年も経って新たな犯行を犯したのか


緋色冴子さん。
頭も良いようですが、クールビューティ。ワケ有り美女のようです。
それにしても『死に至る問い』の中で、雪女・冴子さんを訪ねてきた監察官の兵藤(警視正でsから、人は見かけでは…笑)さん。
ぶ、不細工   だそうで。
聡にいわせれば、お伽噺のゴブリン(爆)。
新たに起きた事件と26年前の事件を捜査してほしいといってきたのはゴブリンなのです。

雪女からの命を受け、素直に捜査に向かう聡は果たして捜査畑に再び返り咲けるのでしょうか

大山さんの作品には『密室蒐集家』という面白い作品もございます。
こちらの雪女・冴子と元捜査一課の寺田聡コンビも連携プレー(というのか?)、いけてると思います。
これはタイトルに〝赤〟がついてなくても選んじゃいますね。
過去事件は解決したところで、被害者は浮かばれません。ですが、未解決のままですと、もっと浮かばれないと思います。
迷宮入りになる事件が減りますよう、祈るのみです。