連載〈ターニングポイント〉輝く励ましの力〈信仰体験〉2020年10月10日

 

 見上げると、青い空が広がっていた。
 きれい。
 彼女にも見せてあげたい。
 関根あずさは、5月の空を写真に収めた。絵手紙を添えてポストに入れる。イラストのウサギと女の子が、自分に代わって思いを届けてくれると信じて。
 「どんなに落ち込んでいても大丈夫だよ。待っているからね」

 

 

 コロナ危機の前は、毎日のように家庭訪問をしていた。創価学会の女子部のリーダーとして、みんなに幸せになってもらいたい。あずさの願いであり、決意でもある。
 新型コロナウイルスは、“華陽姉妹”の仲間たちの生活に大きな変化を与えた。公務員、会社員、フリーランス。状況はそれぞれ違うけれど、多くの人が、心にも影響を受けていた。
 電話をかけると、受話器から不安が伝わってくる。今の仕事は本当にやりたいことなのか分からなくなった。家族を愛せない。何のために生きているのか分からない……本人が思いをはき出せるまで、声に耳を傾けた。
 電話もLINEも、つながらない友がいる。手紙を書いた。助けてほしくて、でも声を上げられずに苦しんでいるかもしれない。
 あなたは独りじゃない。それを伝えたい。自分も、そうして救われたから。

 

友のために作った会合案内

友のために作った会合案内

 

 中学生の頃、同級生からいじめを受けた。いじめられている他の女子をかばって自分が標的に。机の上には毎日ゴミがぶちまけられ、無視され、物を投げられ、通学に使う自転車もぼろぼろにされた。
 一本気な父に言えば学校に乗り込み、騒ぎになる。優しい母にも心配を掛けたくない。生きることが苦しくて“もうだめだ”と思った時、そばにあったのが、祖母が送ってくれた書籍『希望対話』だ。
 「いじめられ、いじめられ、それでも『私は負けない!』と生きぬいた人が、最後は勝つ」
 池田先生の言葉に感動し、御本尊に祈った。不安が包み込まれるような温かな感じがした。“頭を上げよ、胸を張れ”と自分を励まし、いじめを乗り越えられた。

 先生の創立した創価大学に行きたい。高校卒業後、2年間、アルバイトをしながら勉強したけれど、不合格。新聞配達とパン店と保育園。がむしゃらに働いて、勉強して、でも思った結果にならなかった。
 “自分は何がしたいんだろう? 私なんかが頑張っても、何にもなれないのかも”
 女子部の先輩たちが言ってくれた。
 「あずちゃんだからこそ励ましてあげられる人がいるし、果たせる使命が必ずあるよ」
 生花店に勤めて、信頼を重ねた。どの花にも魅力があるけれど、ヒメジョオンが好き。店にあるような花じゃない。ひっそり咲く野花。道端でも生き抜く生命力がある。花言葉は「素朴で清楚」。
 そんな人に自分もなりたい――。

 

女子部の仲間たち

女子部の仲間たち

 

 絵手紙をあげた女子部の後輩が、6月に返事をくれた。「話すことも会うことも苦しいけど、お礼を伝えたくて私も手紙を書きました」
 仕事のプレッシャーや自粛生活のストレスが書かれていた。
 真面目で頑張り屋で、思った進路はつかむことができなくて。それでも一生懸命に、仕事で信頼を勝ち取っている彼女。かつての自分を見るようで、抱き締めてあげたかった。

 春先から開催していたオンラインの会合に、後輩は、顔も音声もオフにして参加し始めた。
 悩みをシェアする中で、みんなが「何でも話せる場所がある」と感じて、力を取り戻していった。
 その後輩も6月に声を聞かせてくれ、7月は顔を見せてくれた。先月には、自分から決意して仏法対話を。友人はオンラインの会合に感動し、「入会したい」と。そのことを今、家族に伝えているという。
 「真心が伝わるように、私も祈るね」とエールを送った。実は、あずさの父は未入会で、長い間、信心に反対していた。

 

 同級生からいじめられていた頃も、唱題は父から隠れるように行い、会合に行くにも母と自分と妹で、タイミングをずらして出掛けるほどだった。
 最初の変化が起きたのは、大学受験の時。「創価大学を受けたい」と一大決心して訴えると、父は「応援するよ」と言ってくれた。
 その少し前、中学時代の出来事を、父は、あずさの妹から知らされたらしい。「創価学会に娘は命を助けられた」と、今になって語ってくれる。

 会合に招待しては「行かねえよ」と言われ、けんかもした。でも当日、あずさが司会マイクの前に立つと、会場の後ろで手を振る父がいて、最後まで見守ってくれた。
 “どうして一家和楽になれないんだろう”と嘆いた日もあった。だけど――。華陽姉妹の先輩の言葉が、今も胸に焼き付いている。
 「それを目指して自分を磨いていく、挑戦なんだよね。創価学会の永遠の指針だもん」
 どうなるかより、どう生きるか。自分に問い続けながら、未来へと歩んでいく。

 

韓国語版の御書全集を学ぶ

韓国語版の御書全集を学ぶ

 せきね・あずさ 愛知県在住。中学時代のいじめを乗り越え、信仰の歓喜と確信をつかむ。コロナ禍では再就職活動に挑み、新しい仕事に就いた。池田先生の指導を読み深める中で決意し、韓国語を独学で研さん。将来は何らかの形で、日韓友好に尽くしたいと努力を重ねる。総県女子部書記長(圏女子部長兼任)。