コップ咲きのヒヤシンスなんかなくてもいいじゃないか
 ここに大地がある
 手のひらに握ればさくさくと崩れ
 春の暖かさを吸って健康だった

 コップ咲きのヒヤシンスなんかなくてもいいじゃないか
 ここに大地がある
 春の日にほのぼのと陽炎だち
 友達の囁きのように明朗だった

 その囁きのように 大地から小さな芽を吹き出す
そして小さな花
 小さな花だけど私だ 私だと活発である

 夏は青草茂りいささか混雑するが
 人間様の手が必要
 大地だって空気が欲しい

穂が垂れて大地が黄色に落ち着くとき
 落ちる陽のあかねがさして豊潤の終わりを告げる
 森の木も一枚二枚と葉を落としていった

冬が来て冷たい衣が大地を覆うと
囲炉裏場の隅の灰に訪れて大地は言った
 “それは別れではない 父と母なる神の休息と
 新しい生命の胚胎なのだ“

 大地の中で固く固く蹲って
 その分コップ咲きのヒヤシンスのようにお嬢様らしくはないが
 春が来たら大地を割って
 一生懸命芽を出しそして花を開く 
 
 ここに大地がある 大地は囁く
 確かに砂礫の大地もある 砂礫を除き水を引け
 草木が生うる 虫が飛び 鳥が歌う
地球の生命はそのようなもの