神を褒めたたえよ
 光り輝いて 温かく
 心解き放されて 和やかに
 愉しければ

 神を褒めたたえよ
 光り輝いて 温かく
 優しさが 優しさと向かい合い
 微笑みのあれば

 愛の群霊は舞い下り
 聖母マリヤは外衣に嬰児を抱き
 イエス・キリストは十字架を背負うた

 観音は
 黄金の水差しを指に持って
 名もない草花に
 慈悲の雨を降らしていた

 人は土を起こし
 土を砕き 種を蒔け
 神の与え給うたもののなかから良き種を選び
 育てよ
 五穀は大地に満ち
 単純な萼は花びらを重ねた


 天に近く
 楊江の源流は土礫を噛んで濁り
 山々は寒かった

 地の底には
 ルチフェロが鉛の沼に腰まで浸し
 腕を伸ばし
 人々に下されるであろう審判の日を
 待っていた

 全知全能の神は
 自らを裁くことをしない

 嫉妬と復讐のなかに
 自らを滅ぼした死せる神々は
 蘇って咆吼し
 火を噴き 氷結の河を押し流し
 人々は叫喚し 互いに殺戮し合い
 不安と恐怖に踞り うち震えていた 

 冷静なる者よ
 時の流れの波を静めよ
 地獄が地表に噴き出て   
 死者が踊りだそうとも一時のこと
 末世の僧達が説く救いの国々も
 個々の人々が描く願望の空間にとどまる
 静止した時間の切り口の彼方には 
 別次元の世界があった

 新しき人々は
 レイテの河を渡ってきたのではない 
 過去は
 微かな重みとなって心を沈めるが 
 残念として蘇ることはなく 
 如来の口元のように
 無量の微笑みと和やみの中に包まれて 
 それは完結した知識であり  
 智恵であった

 全知全能の神は
 初めであり 終わりである  

 現在は円満であり 
 一切であり 
 戸惑うことなく
 軽やかであり
 確実である

 過去は円満であり
 一切であり
 戸惑うことなく
 軽やかであり
 微笑みかけてくる (苦しくとも 悲しくとも)
 
 未来は円満であり
 一切であり
 戸惑うことなく
 軽やかであり
 透明である 


 現在が飛行物体となって
 光粒子の瀰満する 白光の宇宙空間を飛び回る
 個々の世界は
それぞれが円満であり 確実であり
 どこかに空間の歪みがあれば
 行って 矯正しなければならない

 過去のしがらみよ その重い執念の腫塊が
 空間の皮膜をおしあげ
 時間の経腺をおしゆがめ
 世界の調和を乱し
 苦痛と破壊と死をもたらしているのなら
 この腫塊を除去しなければならないのだが
 手術を誤れば 腫塊は転移し
 憎念は地に満ち 天を蔽うて黒雲となり
 死は速められる しかし
 死にいたる病いならば告知せよ
 死後の世界を残してはならない
  
 かくして死せる者は滅盡する
 
 無明に縁りて行 行に縁りて識
 乃至 是の如くして一切の苦蘊集起する
 無明余り無く離滅すれば行滅
 乃至 是の如くして一切の苦蘊滅盡する
 釈迦の仏としての苦悩はこの現等覚から始まった

 イエス キリストの苦悩は
 十字架を背負った時から始まった
 
 観音はいつの時から
 その慈悲の雨を注いでいたのだろうか
 
 しかし今 死後の世界はなく
 苦悩の 慈悲の時間は終わった
 仏も 救世主も 観音も
 ひとときの休息の後
 宇宙の 一元の 神への一体に帰るであろう

 ありてあるもの
   
 しかしここに巨大星が爆発して消滅し
 あそこに宇宙粒子が凝縮して新しい星が誕生する

 繰り返される縁起のようであるが

 心しよう 新しき人々よ
 この宇宙空間にあって われらの新しい時間は
 それぞれの時間のようであるが
神の永遠時間の一部分であって 同質性に連帯する
   
 過去・現在・未来は平等であり
 それぞれがそれぞれの現実に於いて現在である
 ここに新しい星が誕生し
 新しい生命体が誕生し われらは見守る
 それは過去であったし 現在であったし
 それは又未来でもある

 そしてそれは 常に新しき意志によって将来する

 神を褒めたたえよ
 光り輝いて 温かく
 幼き命よ
 神の意志において汝らに
 自由意志の与えられたれば
 限りなく努力せよ
 人は土を起こし
 土を砕き 種を蒔け
 神の与え給うたもののうちから良き種を選び
 育てよ
 五穀は大地に満ち
 単純な萼は花びらを重ねるであろう

 あるものを奪い合うな
 植物は太陽と大地の恵みを直接受けるもの
 恵みによってのみ生き その恵みを
 彼らは他のいのちを育てることによって
 返す
 空気は酸素に満ち
 花は蜜を溜め
 果実はいのちの糧となる
 森は我らの母となった
 その乳房を吸って我らは育った
 あるものを奪い合うな
 人は土を起こし
 土を砕き 種を蒔け

 新しき星に森はあるだろうか
 森は神の恵みによるもの
 幼いいのちには自由意志が与えられる
 我らそれを見守る
1986.3.6
1990.1.1