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 背中をカッパに抱かれた
 ネズミ色のタイツを着て
 毛糸の感触だった
 胸のふくらみ 腰のまるみ
 なまめかしく体温が私に伝わった
 だがその目・指先からは殺意がほとばしり
 嘴で私の腹を裂き 内臓を露出させて啄ばむのか
 「俺は人間の隊長だ 俺を殺したら人間たちが
 お前たちを攻めて皆殺しにする」
 「私たちは姿を消せるから安心だ」
 「火薬を使う」
 「そうね」
 気をゆるめて私の肩ごしに顔をかしげた女カッパの嘴を
 黒ずんで 冷たい 三角形の嘴だった
 私はすかさず布を巻いて包んだ

 昨夜からの雨はどうやらあがったらしい
 明るい日差しが窓こしに部屋にはいっていた

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 濁々の大河が流れる
 
 山肌の岩を削り 丘を削り 野を削り
 渦巻いて昇る雲の間を
 鷲が けたたましく鳴きながら滑空していた
 やがて一切が急速に黒の一転に凝縮し
 あとには黒い透明の帳を通した青の色の宇宙の広がりがあって
 そこに
 銀色の目が
 悲しく
 輝いていた

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 流れが涸れて
 えぐられた砂利の壁が露呈して
 川底と函をなしていた
 
 遠く陽は傾いて
 灰色の河原に
 朱の霞を投げていた

 東から暗闇が迫ってきて
 朱の霞を蚕食し
 函の中を埋めていった
 
 黒い影が歩いてきた
 手長猿のような姿だった

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 蜜蜂が飛んできて
 美の前で自嘲した

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 桃の缶詰だった
 桃の色は
 乙女の愛の明るさだ
 桃の汁を飲むと
 青春に映える乙女の
健康な肉づきを見る味わいがある

ぎしぎしした生活のなりわいを忘れて
暗い影を顔から消して
晴れ晴れした心で生命を想おう
北欧の人々が夏の太陽に裸身をさらすように
貧しさで一杯になった心を
愛の光に思い切り開放しよう


花言葉で愛の幸福
甘く
とろけるような感覚だった