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まだ少ししか飛べないはずなのに
一つの粒になるくらい遠く飛んでいって
御寺の尖塔に止まって
もう すっかり疲れてしまって
鳴きながらすべり落ちたのが
私に見えた
チル
私は夢中でお前の後を追ったのだ

この世の中には猫もいる
たまたまお前の友達が人間の手を離れたばっかりに
塀を二匹の猫が競うようにかけ上り
三つの姿が重なったときにはすでに落下
土の上に羽が飛び散っていた
私がどんなに心配したか分かるかい

私がお寺についた時にはもう
お前はそこにいなかった
お坊さんは知らん顔だった
それでも私は夢中でお前を探したのだ

公園風の原っぱで恰幅のいい白髪のおじいさんと
七才ぐらいの女の子が子犬と
おいでおいで遊びをしていた
私はどんなにか羨ましかっただろう

雑木林の中にお前らしい姿を見かけたとき
真実お前とは思えず
もう諦めた気持ちで
だから夢中でチルチルと呼んだのだ

背中に灰色のカゲがあって
そうだ私のチルだ 私のチルです
私は全力をだして駆けていった
チル
そしてお前も私を認めると跳びあがって喜んでくれた
抱き上げた途端なんとお前の重たかったことだろう
それにお前は人間の姿となっていて
銀の糸で織った晴れ着を着ていた

天国に行くんだ チル