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ナルシスに描かれた転落天使は
今なお人間の間に美青年としてあった
或いは聖サターンの末路に等しく代行者としての自負に
お前は転落したのか
ボロボロと地の草は萌え
その地が割れての二重転落はダンテ二十四時間の地獄遍歴
あそこに鉄を鉛と化して腹に呑み 或いは墓石を背負うて嘆く
「彼はついに吾らを知らないだろう」
いや一切を自らの因果として 然もなお
そこに神の意図を探るのは羅漢智の大乗である
縁覚・声聞の転身は苦悩の末にあり
そこに人間はナルシスやサターンの衣を脱ぐだろう
真実個性においてある神々は昇天の午睡に夢を見る
遠い昔 新しい種族の口にした林檎の実は冷たかった
だが可能性は地殻を破り そして今
彼ら自らが透明な肢体を天空に伸ばしていた
◇ ◇
昼の日中の燃焼よ
自らを愛することの罪を知った青年が
膝まづいて熾天使に合掌する
美しいと思えるものは他者であり
他者と自らを結びつけるものに愛があり
夢よ 和やみよ 信頼よ
幻想にみた白光の如来が
体温の微笑みになく 静坐観の視野にあったとて
存在は 生命の弁証法に明日を待っている
昼の日中の燃焼よ
自らを愛することの悲しさに両手を広げ
膝まづいて熾天使に合掌する
盲目に涙したたって対象の鏡を流し
春風にはじらいと花をそえる 秋風に手を組んで庵をむすぶ
愛よ 和やみよ 信頼よ
幻想にみた白光の如来が
四季もない一色の世界にダルマを観念するとて
サットヴァは小さな神の生誕である
そのカルマンに五趣六道にさ迷うとも
無無明の 初源の自性の純粋の 今に覚める
ひとつのサットヴァが透明な階段を上っていった