人間という存在とベクトル
 その場は限りなく小さく 
太陽時間の46億年分の20~10万年
のホモ・サピエンス時間であり
 73億8300万キロメートル分の12,756メートルの生息可能域であり
僅かな揺らめきでその生存は消える
 
しかしいいではないか
 太陽と地球の子として素朴に生まれ
大地を耕し よき種を蒔き その収穫を喜ぶ
生命は継承であり
家族であり
部族であり
あそこには緑の森 緑の野原
 さらさらと澄んだ水が流れている
 そのような夢を見ながら
 太陽の光芒に包まれて 消滅するのならば

           ◇         ◇

ルチフェロはかって大いなる光りの天使だった
 何が彼を地の底の暗黒の鉛の池に 腰まで沈めさせたのか
 ルチフェロは嘆きそして怒る
 
千億星の百億星の可能性
 或る星は光りのない星 生命を失った星
 或る星は新しい神の誕生
 インディオの流血は聖母マリア
 殺戮者は白い馬に乗ってやって来た
 犠牲であるべき十字架の上のキリストの手足から流れて
 清純の泉を染めた血は 二重の感情である
 明確なのは恐れと祈り 支配と救済の二重劇である

そうだ
砕かれた蛇の頭の黒い観念と
われら 敢てわれらと言う
光りと闇の二面を背負う者 
人類に知恵を与えたのは誰か
エリ エリ と呼ばれた者は誰か

確かに 青い狼の末裔たちは
大地を耕し よき種を蒔き その実りを蓄えた者の城を破壊し 略奪した
しかし 従い属した者の信仰を奪うことはしなかった

自らを創造の神とし 唯一の神とし 裁きの神とし
自らの栄華のための宮殿を造り 
従わぬ者は殺戮し 従う者に礼拝を強いた者は誰か

ルチフェロは悲を知っている
しかし地の底に腰を繋がれて
その巨体をもってしても
精一杯伸ばした手の指の先は 慈に届かなかった

それぞれの星を包むダルマの帯は神の領域である
澄んだ宝石の光りに流れる愛の粒子に
真・善・美の純粋観念がある

しかし揺らぎと破れの不均衡な動体力学の中に 
取り残された星団は 暗黒星雲をひかえながら
それでも湾曲したダルマの帯でその域を囲む

二極の対称の破れに 零れて落ち 光りを失った神々は
ルチフェロの苦しみに自らを慰めよ
確かに
砕かれた蛇の頭の黒い観念と
われら 光りと闇の二面を背負う者 
暗黒物質の黒い帯
 それも神の部分

人類は人間となり 
ヒトは
或る者は阿頼耶識に自らの系譜を探る
或る者は阿字観に清明と心の円を観る
そして抽象観念が宇宙につながる空間を駆ける

確かに
砕かれた蛇の頭の黒い観念は
自らの優越を示すべく
バベルの塔の階段を登って神の光りに変わろうとする
人類は バベルの塔の階段を登った

神の怒りの火がバベルの塔を打ち砕く
驕慢の人間 阿鼻叫喚の相で地の底に落ちる

われら何を教え得るのか
すべては神の部分であり
二極の対称の破れから解放されて神の初源に帰るとは

われら神の初源に帰る
二極 未だ分かれず 一切を包み超えて空であり
空はゼロ、無

われらの意識の出でし所へ

ルチフェロの地獄の底の夢