~思えばいつも微かな風が~







好きなことをやりましょう、って

好きなことを仕事にしたい、と


思うとき、


わたしは本が好きだから

図書館とか本屋さんかなー、と思い浮かべることはあっても、実際に働いたことはなく






だけど  いつも図書館で




出会う一冊、一冊は



いつも胸をときめかせて



図書館の 紙の匂い


空調に歴史の匂いが入り混じるような

「図書館」という建物はいつも


宮殿のように



たとえ小さな分館でも



「本に囲まれている」




そのことがわたしを至福にさせていた





お目当ての本を探すとき

その日の出会いの小説と



貸し出し冊数に制限のない住んでいた街の図書館で


あれにするか

これにするか

どれにするか

持ち運べる重さの本を


幸せに悩みながら選ぶ時間は



小さなオーディションのようだった








たとえば  街の本屋の棚で




新品のヒカリを放つ その顔は


一冊、一冊、お行儀よく


本の方から お客さんを


わたしたちを見ているようで



こちら側がオーディションされてるみたいに

本の「街」を歩くんだ






本屋さんは小さな街だ






商店街やバス通り 並木道


お料理 占い 健康 参考書



ジャンルの波



区画整理された 本の街




街の本屋さんは 時に乗り換えの駅のように

人と本を 交流させる



誰でも一度は本を買う予定がなくても

帰り道ふらり 立ち寄ったことがあると思う




車に給油をするガソリンスタンドみたいに


人生を豊かにチャージする

その一冊に出会うために本屋さんがあるのだと


本屋さんが

本を売るためのお店ではないことを




人はみんな知っているのかもしれないなぁ、と





介護の仕事は目の前の

おばあちゃんのオムツを替えることだけが

目の前の高齢者のお手伝いが


介護の仕事ではないんだな、って



その目の前のおばあちゃんはもちろんだけどそのおばあちゃんのご家族さまが

安心して生きていける


そんなふうに

介護の仕事の向こうには


たくさんの人の幸せがあることが


少しずつ少しずつ 見えてきた頃


泣きそうになって震えるくらい

泣きそうになって震えるくらい



仕事、というのは目の前の見えているところと見えてないところまで人を幸せにしていくことが根底に流れている、と


その流れを 根底を


もっともっと 知りたいと


思う今なら




本が好きだから図書館が好き

本が好きだから本屋さんが好き



だけではない本の魅力が



もっともっと見えてくるみたいで面白い








まだ文字を持たない頃に

石に 自然に 文明を


刻むことを 記すことを 遺すことを



なぜ人は 




なにを人は




伝えようと

伝えたいと




その想いのひと粒がなければ



誰も何も 書きはしないし


誰も何も 遺しはしない





伝えたいこと、って

伝えたいこと、って


いつだってきっと 愛だと思う、って




本が好き、って  自分の「好き」が

たくさんたくさんの素敵なことを見せてくれる、魅せてくれるみたいに


とどまることなく広がり続ける「好き」の世界を知ることは


また一段 もう一段 深く自分を知るために

わたしたちはこの世界に生まれてきたんだ

と「好き」を通して


今 思う








本が好きだから コレ いいなぁ、と

ある時、惹かれた駅前のポスターは





仕事、ではなく ボランティアだったけど





介護の仕事に巡りあうきっかけに欠かせない経験だった





音訳(おんやく)ボランティア募集


目の不自由な方へ本などの活字を音声にして伝えるボランティア






本が好きだからやってみたいな


誰かが読みたい本を

音で訳する お手伝いができるなら


やってみたいなぁ





「好き」から一歩 動いたあの日






  風の問いかけ ① ~微風~





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