このところ俳句が人気である。俳句は今や世代を超えて日本人
なら誰もが感じる季節の心の糧とも言えるだろう。
春夏秋冬、四季は巡り、秋になると必ず襲来するのが台風だ。
台風は野分とも言うが、野分という言葉で私がいつも思い出すのが
江戸時代の俳人、蕪村の俳句である。
鳥 羽 殿 へ 五 六 騎 急 ぐ 野 分 か な
この俳句、一目見ただけで、一読しただけで、その情景がありありと
目に浮かぶ。何の急用か分からないが、激しく吹きすさぶ嵐の中を
騎馬武者が駆けていく、まるで映画か絵巻を見るかのようである。
このような名句を前にすると私はしばらく声も出ない。