暫定準家族、白黒のチビ。
里親を探すと決めたので、あえて名前はつけなかった。
猫、チビ、チビチビ、おキャット、おキャット様、ネコー、ニャンコ、ホネホネ等々
その場かぎりで好き勝手に呼んでいた。

全身どこを触っても、見事に肉は愚か皮の感触以上にはっきりと分かる骨格。猫の骨格標本を毛皮で包んだ感じというか…思わず絵に描き起こしておこうかと思うくらいわかりやすい骨の繋がり具合であった。

目ヤニ鼻垂れがひどいと書いたが、実は両目が真っ白に濁っており、どちらかというと右目の方が白い部分が少ない分、うっすら見えてはいるようで。
人の方をじーっと見つめるのである。
よく見えていないせいか、体力がないからか、動きは実にスローモー。

拾われてしばらくは、この子はひたすら眠っていた。
それまで見かけたこともない仔猫。どこからか歩いてきたはずだが…置かれた場所で眠り込んでしまう。
エアコンを点けっぱなしにしていたので、床は冷氣が溜まるだろうと、できるだけタオルにくるんで寝かせておいた。
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拭いても拭いてもいつの間にかたまってしまう粘つく目ヤニ。氣道を塞ぐ鼻水。
コットンを湿らせて優しく拭き取り、ペット用の目薬をさす。何度も鼻を拭き綺麗にしても、あっという間にプス〜フシューと音をたてる。

切りがなかった。

人のそばを好み、膝の上で眠る。
小さな命から全幅の信頼を受ける幸せを満喫する。

いくら氣をつけていても、目の縁は腫れ上がり、白濁した目はやがて結膜炎を発症。腫れ上がったせいで目は狭まり釣り上り、ホラーとしか言いようのない顔だった…

最初はべたっと潰れて寝ていたが、落ち着いて来ると香箱組んで眠るようになった。
上から見たら、白黒のツチノコのよう。
フォルムは申し分なく可愛かった。

日を追って、家族一同、猫可愛さにのめり込んでいった。特に傾いたのが、最初に子どもにもといたところに戻してこい!と叱るお父さんみたいだった兄(今年は長男を"あに"と呼ぶのがマイトレンド)。
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あらゆる角度、仕草の一つ一つに、目を細めては、『可愛い…』とため息をつく。
そのうち、発言が猫可愛いあまりにとちくるってきた。

スポイトで無理やり飲ませていたミルクをだんだん積極的に飲むようになって、試しに器に入れて飲ませてみた。かなり不器用な舌遣いで顔中ミルクにして初めて飲めた時…
「可愛い…こんな可愛すぎるのは反則じゃないか?」
なんども言うが、ガリガリ薄汚れ色目やに鼻水結膜炎のホラー顔である。
「問題ない。存在自体が可愛いのだから」


十分体力がつくまで、この子は自分のしっぽに全く無頓着だった。細っこいしっぽはいつも力なく、触っても引っ張っても氣にも止めない様子。
後足も弱々しいので、何らかの障害も考えられた。
そして、ほとんど声が出ないのであった。
口は開いているけど、声が出ない。
幼い猫の可愛い高音を期待していたので、がっかり…以前に、鳴けないかもしれないのも気がかりだった。
アパートでこっそり飼うにはもってこいな状態だったが…

そう、数々の不具合を鑑みるまでもなく、猫バカ家族は猫の存在そのものにすっかりヤられていたのだった。
「こう不具合のある子の里親探しは無理だと思うんだよね。手も掛かるだろうからね。静かだから、このまま飼っても大丈夫なんじゃないかと思うんだけど」
結局、満場一致でめでたく家族に迎えることになったのだった。
多分、3日目あたりには決まっていた氣がする。

3日目、この子は初めてお粗相をした。それまで、いくら湿らせたティッシュで刺激してもおしっこ一滴出なかった。それだけカラカラだったということだろうけど、さすがに3日ともなると機能不全を疑うところだった。
氣がついたら、畳の上におしっこが★早速トイレ砂(その時は百均で買った大粒の木製ペレットだった)をなすりつけて匂いを移し、トイレ(百均の一番小さい洗い桶)に入れた。
次に催したらしい時にトイレに乗せると、クンクン匂いを嗅いで—小さな手で砂(でかいけど)を掻き出した!
そして、掻いた凹みに手を乗せて、その姿勢でおしっこ!
なんのために掻いたんだw

翌日には初ウンチにも及んだ。
その時は、なかなかしつこく掻き掻きして、ソコソコの穴を掘ってから、ちゃんとそこにお尻を持っていった。
なるほど、やっと覚えたか!進化したなーと思ったら、その後もしばらくの間、おしっこの時は掻いた場所に手を置くスタイルは続いたのだ。
こういうところが、猫として反則的に可愛いのである♡

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そしてなぜか、しばらくの間、トイレはお氣に入りのお昼寝場所てもあったのだ。これは見つけたら、つまみ出すことにした( ̄ω ̄;)エートォ...

結膜炎を患い始めた頃から、クシャミを連発するようになり、その度に鼻水を振りまくようになっていた。最初の一ヶ月は、成長もしたが、不具合が次から次へと出てくるのだった。