不具合だらけ、顔がホラーなガリガリ拾いっ子も、少しずつ身がついていき、実家の母からもらった半ゼリー状のウエットゴハンを食べられるようになる頃には、尖った顔にも若干丸みがついてきた。猫ゴハンのパッケージの写真のようにはなりそうもなかったが…眠っている顔はなかなかに可愛くなっていた。
飼うと決めてから、さあ、名前を決めなくちゃ♫という楽しい家族会議を何度も開いたが、これがなぜか難航していた。
息子二人が私の意見をことごとく却下。
そして二人の案はどれもロクでもないのだ。
特に弟!こいつはふざけてばかり。
とても猫を愛する男とは思えない案ばかり。
毎日毎日、呼ばれるたびに違う名前、とんでもない名前。
目さえ合えば寄ってくる、寝るの大好きくしゃみ猫。
しかもそのくしゃみがクサイ鼻水つば混じりで飛んでくる!
いつの間にか、胃でも悪いのか、異様な口臭がするようになった。
しかも、抱き上げて顔を近づけた時には百発百中の精度でくしゃみが出る。
暑い暑い今年の夏。
暦の上では秋だったが、風邪を引いたのか?
病院に連れて行かねばならないだろうか?
うちはビンボー母子家庭…
しかも、キャリーに入れると、仔猫は豹変!
死に物狂いで暴れて出たがるので、連れて行くのは至難の技。
でも不具合のオンパレードであった。
目の表面が白く曇っていて見えにくいのか凝視、動作がゆっくり
目ヤニからの結膜炎
くしゃみ鼻水、しかも青洟たれ
前足の変形…痛がらないけど、関節や足のヒラが潰れて腫れていた痕跡が
焦げ茶色の肉球に横筋入っていて、一度何かに轢かれたか踏まれたか
あと足としっぽの力のなさ
声が出にくい
声に関しては、出ることは出た!
どこに行くにもついてくるから、ある時台所に立っていて、気付かずに尻尾を踏んでいた。
長々と踏んでいたのだと思う。
さすがの仔猫も堪らなくなって、一声叫んだのだ。
ギミャ!
無理やり絞り出したような声だったが、出ることは出た!
クララが鳴いた!
可哀想なことしたが、この時ばかりは嬉しかったし、安心した。
あまり可愛い声じゃなかった…
毎日薄紙を剥ぐように成長し、くしゃみは頻発。
日に何度も顔を洗いに誰かが洗面台に飛んで行く日々だった。
名前の方は危うく吉田直樹に決まるところだった。息子ら最愛のゲームプロデューサー兼ディレクター。43歳のおじ様だけど⁈
同じようなパターンで小島監督という案も根強かった。エオルゼア対メタルギア…
なぜか若手漫画家にいじられるだめなおやじの名前も取りざたされた。複数の漫画の中で犯人役に顔を出される猫好きおやじらしいが?
猫にそんな名前つけたくない!って案ばかり出していた弟が、ある時ポロっと
「ホルスはどう?」
ホルス!
いいじゃないか?
エジプト神話の隼頭の天空と太陽の神
オシリスとイシスの息子として、子どもや健康を司る神でもあり、私が長年愛用するエジプト秘法カードにも、ホルスの象徴ウジャトの目が出てくる。
往年の東映長編動画の名作、太陽の王子ホルスの冒険のタイトルも脳裏をよぎった。
仔猫を見る。
との思いを込めて、その名前に決めてしまった。
決めた途端にブーイングが来た。
次の日には名前を出した弟も文句垂れた。
氣無しにポロっと出した名前に決められて、もっと面白名前にしたかったのだろうが、そうは行くか。
名前が決まってからも延々と、ホルスにはいくつもの別名があった。
はっきり言って、ホルス、ホルちゃんと呼んでるのは私だけという状況がつい最近まで続いたのだった。
息子らはやがて諦め…一番口にする名はネコになっていた。
ホルスでいいじゃん!
似合わないけどw




