南米の旅行先として、真っ先に挙がるのは、

マチュピチュやウユニ塩湖を擁する、

ペルーやボリビアだろう。

ただ、「南米の国といえば?」と聞けば、

大半の人が「ブラジル」と答えるはずだ。

そんな圧倒的な存在感のある国に、早々に飛び込みたかった。

ブラジルの地に足を踏み入れて間もなく、

何故南米の旅行先として、この国が人々の頭に浮かばないのか、目の当たりにすることになる。


最初に訪れたのは、リオデジャネイロ。

街には海外からの観光客がまるでいない。

ブラジル人ばかりだ。

そして、誰も外で携帯電話を触っていない。

盗まれるからだ。


丘の上や見晴らしの良い高台に高級住宅が建ち並び、そこに金持ちが住む。

そんな構図は、関西の芦屋の街並みや、韓国の大ヒット映画「パラサイト」が分かりやすい例だろう。

しかし、治安の悪いブラジルには、高台に貧困街が存在する。

まるで彼らを除け者にするかのように。

失業。ドラッグ。ギャング同士の抗争。

警察も滅多なことがない限り、立ち入らない。

そんな地域のツアーを申し込み、恐る恐る足を踏み入れた。


錆びた屋根に謎の無数の電線、破れた洗濯物が並んでいた。

リオデジャネイロの貧困街は、行政が作ったものではなく、11軒の家に住所がないという。

貧富の差が激しく、国民の約60%が平均所得の半分未満の所得しかない。

そんな残酷な事実が如実に物語っていた。




ただ、驚くことに人々は陽気で、皆が笑顔だった。

高台からの景色は海が見え、美しい。

ここは本当に貧困街なのかと、先程の光景が嘘みたいな感覚になるほどに。




次に訪れた街はサンパウロ。

ブラジル国内のみならず、南米最大の人口を抱えている大都市だ。

中心地に足を運ぶと、皆が取り憑かれたように暗い顔をしていた。

ホームレスの数もリオデジャネイロとは桁が違う。

過ぎゆく人々の足取りも早く、「他人は他人」という空気が蔓延していた。

リオデジャネイロとサンパウロ。

同じ国とは思えない空気の違いが確かに存在していたのだ。


「後進国は治安が悪い」

そんなふうに、一刀両断されることがある。

ただ、後進国の人々は互いに助け合っている。

そうしないと生きていけないからだ。

東京やニューヨーク、ロンドンの人々が冷たいと言われてしまうのも、こういった背景が必ずあるはずだ。

この旅を始めてから、日本に行ったことがあるという人達に

「どの都市が1番良かった?

と聞くと、

「大阪」

と答える人が多い。

「東京は?」

と聞くと、

「東京より大阪の人の方が温かい」

と言うのだ。

ズカズカこちらのテリトリーに入ってくる大阪のオバちゃんは偉大なのだと、この話になる度に思う。


「スラムは危険」

そんな危険な場所に行き、スリルを味わおうということばかり考えていたが、浅はかだった。

窮屈な思いをしている人々が互いに支え合い、笑顔で暮らしている。

当たり前ではない自分の毎日と、幸せは誰かと比較するものではない。

言葉にすることは、とてもとても簡単だが、そんなことを改めて考えさせてくれた場所になった。



YS