電車に乗っていた
イスは空いていなかった
それでも私はドア側の角をキープする事が出来た
ウォークマンに入れたお気に入りの曲に揺られながら何駅かを通過した
ふと、ある駅で一人の女の子と乗り合わせた
小学三年生くらいの幼い女の子
女の子は一度奥まで入ってから再びドア側に戻り携帯電話を開いた
「○○いなかった」
イヤホンをしていた私に聞こえたのはこれだけの言葉
おそらく、待ち合わせするハズの相手に出会えなかったのだと思う
女の子はその駅でドアが閉まるまでのほんのわずかな時間だけ携帯電話に耳を傾け電話相手に指示を仰いでいる様子だった
電話を切った後、女の子は真っ直ぐ外を見ていた
涙目で、
唇を噛み締めて、
鼻を啜って、
小さな手の平を強く握って、
外を見ていた
強い女の子だと思った
私が女の子くらいの時はもっと泣き虫で一人で電車になんて乗れなかった気がする
小さな女の子は一人ぼっちでどれくらい不安だったろう
泣き出したくて、でも涙を必死に堪えたその胸には何を思っていただろう
固く握られた小さな手の平には大きな大きな強い意志が見えた気がした
終点でドアが開けばキョロキョロと辺りを見回し不安な表情を抱きながらも力強く足を踏み出した
私とは正反対に向かったその足は堂々としていた
小さな瞳に
大きなエネルギーを見た、そんな日
bye
![パー](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/106.gif)