堺市で2018年、父親と弟を殺害したとして殺人罪などに問われた足立朱美(あけみ)被告(49)の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。長井秀典裁判長は、無期懲役(求刑・死刑)とした1審・大阪地裁の裁判員裁判判決を支持し、検察、弁護側双方の控訴を棄却した。

 1審判決によると、被告は18年1月、堺市の実家で、父親の富夫さん(当時67歳)に多量のインスリンを投与して低血糖脳症などに陥らせ、約5か月後に死亡させて殺害した。同3月には、弟の聖光(まさみつ)さん(同40歳)を睡眠薬で眠らせ、実家のトイレで練炭を燃やして一酸化炭素中毒で殺害するなどした。

 公判で、弁護側は「(富夫さんは)末期がんの影響で衰弱して死亡した」などとし、無罪を主張。検察側は「完全犯罪をもくろんだ計画的な犯行で、死刑が相当」としていた。

 



2018年に大阪府堺市で、インスリンを過剰に投与し父親を殺害した罪や、練炭自殺に見せかけ弟を殺害した罪に問われ、1審で無期懲役を言い渡された女(49)。判決を不服として、検察側・弁護側の双方が控訴していましたが、大阪高裁は4月26日、いずれの控訴も棄却しました。



 1審判決によりますと、足立朱美被告(49)は2018年に堺市で、▽父親の富夫さん(当時67)に多量のインスリンを注射で投与し、低血糖脳症に陥らせて死亡させたほか、▽弟の聖光さん(当時40)を睡眠薬を飲ませ眠らせた上で、練炭を燃やし、一酸化炭素中毒で死亡させました。


 1審の裁判で、朱美被告は一貫して黙秘。富夫さん死亡と聖光さん死亡のいずれも、検察側と弁護側との間で、事件性と犯人性が争われました。

 ▼「低血糖放置死ぬ?」「インスリン注射服の上から」などの検索履歴 父親殺害の動機は不明…

 大阪地裁(2022年11月判決)はまず、富夫さんの死亡について、糖尿病患者で血糖値コントロールにも長けていた富夫さんが、誤ってインスリンを過剰投与したとは考えにくいと判断。

 さらに、「低血糖放置死ぬ?」「低血糖死亡」「インスリン注射服の上から」などの検索履歴が朱美被告の携帯電話機に残っていたことなどから、朱美被告が過剰投与を実行したと断じました。

 また弁護側は、富夫さんの死亡にガンの進行が与えた影響の大きさを指摘しましたが、地裁は「低血糖脳症により植物状態に陥り誤嚥性肺炎が起きたことで、栄養減量が実行され、富夫さんの死につながった」として、インスリンの過剰投与と死亡との因果関係を認定しました。

 一方で、富夫さん殺害の明確な動機は、裁判でも明らかになりませんでした。


▼練炭をオンラインで購入 偽の遺書をパソコンで作成…「練炭自殺に見せかけ殺害」

 大阪地裁は、弟の聖光さんの死亡についても、
▽朱美被告が、一酸化炭素中毒についてインターネットで検索・閲覧したり、オンラインショップで練炭を購入していた点
▽「俺はおとんにインスリンを打った」などと記された遺書が、朱美被告が使ったパソコンで作られていた点
▽遺体から、朱美被告にしか処方されていなかった睡眠薬の成分が検出された点
などから、「朱美被告が、聖光さんを富夫さん殺害の犯人に仕立て上げようと偽の遺書を作成し、睡眠薬を飲ませ、練炭自殺に見せかけ殺害した」と断定しました。

 ▼検察側は死刑を求刑も…判決は「無期懲役」

 そのうえで大阪地裁は、量刑について、被害結果は重大としつつも「従前の死刑判決事案との比較を踏まえても、死刑選択が真にやむを得ないとまではいえない」と指摘。一方で「有期懲役刑は相当ではなく、生涯をかけて自己の犯した罪と向き合わせるべき」として、朱美被告に無期懲役を言い渡しました。

 全面的に無罪を主張していた弁護側と、死刑を求刑していた検察側は、この判決を不服としていずれも控訴していました。