長崎県佐世保市母ケ浦町の佐世保実業高などを運営する「学校法人佐世保実業学園」の女性理事長が、教職員らに対し、日常的に暴言を浴びせるなどのパワーハラスメントをしている疑いがあることが、同校が3月に実施した調査などで分かった。回答には理事長から「屋上から飛び降りるかを聞かれた」「書類を投げられた」など、パワハラと思われるものが多数あった。理事長は取材に「(パワハラの)事実は存在しません」と否定している。

 理事長は、副理事長などを経て2019年に理事長に就任した。

 同校では19年度から23年度までの5年間に教職員78人が退職。昨年度は全体の約3割に当たる21人が退職した。このような状況を踏まえ保護者でつくる同校育友会は昨年12月、ここ数年の教員の「異常な退職率」などについて理事長らに「意見及び是正願い」とする文書を提出、県学事振興課にも送付した。

 文書の提出を受け県学事振興課は今年1月、同校で面会指導を実施した。昨年度の離職者の割合が他校と比較して約10倍に上ることや、文書にパワハラを示唆する記載があったことなどから、離職率の高さの原因究明や離職を防ぐ体制整備の実施などを助言。同校は3月、教職員を対象にパワハラに関するアンケートを実施した。

 アンケートでは「『猫でもわかる。なんでわからん』と言われた」「2時間以上説教された」「意見を言うと感情的になり、無視や減給されることがあった」など理事長からパワハラを受けたとする回答が多数あった。度重なるパワハラで、「(理事長から)内線がかかってきて表示を見ると動悸(どうき)がする」「2人で話をするとき手足が震えるようになった」「おびえて仕事をしている」などと精神や身体に支障がでているケースもあった。なかにはパワハラが原因で「適応障害の診断を受け休職した」という記述もあった。

 関係者によると、理事長就任前からパワハラは行われていたとみられ、数年間、事務主任を務めた男性はパワハラで抑うつ状態と診断され19年に退職している。

 決裁の拒否や、人手不足による許容範囲を超えた仕事量などで体調不良となり退職した元教員は取材に応じ、「皆いっぱいいっぱいで一日を乗り切るのがやっとだった」と振り返る。会議の中で管理職が理事長から「辞めれば」と言われているのを何度か聞いたことがあり、「特に理事長と関わる機会が多い事務員は人格否定の暴言などで疲弊しきっていて、相談を受けることが多々あった」と話した。

 退職者が相次いでいる状況を受け、教職員21人が今年3月に組合を結成(現在は20人)。理事長宛てに「ハラスメントのない職場づくり」などを求め「職場改善要求書」を提出、回答を求めている。