能登半島地震で甚大な被害があった石川県輪島市の市立輪島病院(175床)はいま発熱患者が殺到し、みずからも被災した職員らが懸命の診療を続けています。

 市内で唯一の総合病院で、災害拠点病院でもあります。品川誠院長(65)が朝日新聞の単独インタビューに応じ、「病院の機能が落ちており、ここで高度な医療は受けられない。できるだけ早い二次避難が必要だ」と語りました。

■「超急性期」終わり、今は感染対応

 家の倒壊などにより、この病院でも多くの方が亡くなりました。正月で祖父母に会いに来ていて亡くなった10~20代の人も複数いました。

 外傷を負った患者の命をつなぐための「超急性期」は過ぎました。今は、避難所から運ばれてくる感染者を診療することが大きな役割です。

 この数日、感染者は急速に増えています。

 10日に来た発熱患者は約15人でしたが、11~13日は40~70人で推移しています。ほとんどが新型コロナウイルス、インフルエンザ、感染性胃腸炎で、脱水症状を起こしているケースも多いです。

 入院患者は14日時点で約40人おり、少しずつ増えています。避難生活の過酷さが伝わってきます。

 これから低体温症の患者が増える可能性もあります。このまま増え続ければ、満床になってしまうおそれがあります。

■職員の多くが被災、疲労ピーク

 一方、地震発生から2週間が経とうとしていますが、病院の機能は大きく落ちたままです。

 断水が続き、病院の天井の一部が落ち、機器が壊れて手術や一部の検査はできません。毎朝のミーティングは「残っている水は3日分、食料は4日分しかない」という報告から始まる有り様です。

 また、多くの職員が被災しました。子供や高齢の親と避難し、出勤できない人もいます。特に看護師は本来の6割ほどの人数しかおらず、交代要員がいない事務職員も休みがとれず、みんな疲れ切っています。

 職員の負担を軽くしつつ、避難所からの新たな患者を受け入れるため、約110人いた入院患者のうち約85人について、金沢市や県外の病院に転院してもらいました。

 高齢の方ばかりです。地元から引き離してしまうため、大変申し訳ない気持ちでした。

■「高度医療受けられない、二次避難を」

 それでも、病院はぎりぎりの状態です。そもそも、ここは「へき地医療」をおこなっている場所だからです。

 慢性的に医師が足りないため、脳神経外科は休診し、以前は実施していたカテーテル手術もやめました。この病院だけでは完結できないのです。そこに追い打ちをかけるように、今回の災害が起きました。

 当面の輪島病院の機能は、重症患者を市外の適切な病院へ送り出すための拠点となることです。通常の外来を再開できる見通しは立っていません。

 避難中に体調が悪化して重症化した場合、輪島病院では高度な医療は受けられない状況です。被災者には、できるだけ早く、医療態勢が整った地域へ二次避難していただくのが現実的だと思います。

 そして、全国のみなさまには、看護師派遣などの医療支援を可能な限り続けていただきたいと思います。