会員債権者9万9865名



 12月15日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた(株)エム・シーネットワークスジャパン(東京都港区、代表塚田啓子氏、以下、エム社)。倒産から1週間たった現在も連日同社に関する報道が続いており、世間の関心の高さがうかがえる。 これだけ注目されることになった要因のひとつは債権者の多さだ。債権者数は実に10万273名。そのうち契約中の会員債権者は9万9856名。負債は58億5776万円で、そのうち契約中の会員債権者に対するものが15億9790万円となっている。会員債権者1人あたりの債権額は平均1万6000円となるが、なかには契約後まもなく数十万円を有する人もいるようだ。

売り上げは3年間で125億円から45億円に


店舗数のピークは2019年で53店舗。売り上げのピークとなった2020年4月期の年収入高は約125億6100万円あったが、時を同じくして発出された緊急事態宣言により、全店舗が休業となるなど事業環境が急激に悪化。休業終了後も時短営業を余儀なくされるなど収入は減り続け、2022年4月期の年収入高は59億9204万円、2023年4月期は45億1932万円と推移。23年4月期は、営業赤字14億7750万円、経常赤字12億631万円、最終赤字23億1130万円となり、同期末時点で65億1019万円の債務超過となっていた。


M&A交渉が決裂

エム社は業績悪化のなか、8億円を超える社会保険料を滞納し、M&Aによる事業継承先を探していたが、今年10月頃に候補先との交渉が決裂して限界を迎えていた。急激な業績悪化に見舞われていたが、2022年4月期で3億8820万円、2023年4月期で2億6940万円の役員報酬が支払われていた。

エステティシャンやセラピストは関係会社から出向

エム社は直近で30店舗を展開。485名の正社員と11名の契約社員・アルバイトの計496名がエステティシャンやセラピストとして勤務していたが、そうしたスタッフ全員は関連会社である(株)ファーストコンサルティング(東京都港区、以下、ファースト社)の社員として採用され、エム社に出向する形態をとっていた。つまり「銀座カラー」の従業員はエム社の社員ではなく、ファースト社の社員だった。 ファースト社は、2001年10月に設立され、初代代表に塚田直樹氏が就任。同氏はエム社の創業社長であるが2002年に代表を辞任。エム社の新代表には妻の塚田啓子氏が就任し、直樹氏はその後もエム社の主要株主(直近の保有率は83%)となっていた経緯がある。 ファースト社の主力事業は、業務用脱毛ジェルや美容機器類の卸売りや、まつげ専門エクステ店「銀座カラーアイズ」(池袋店)の運営で2019年10月期には年売上高約40億4500万円をあげていたとみられる。

エステティシャンは1月15日付で全員解雇

エム社は「銀座カラー」で働いていたエステティシャンやセラピスト(ファースト社の社員)全員を2024年1月15日をもって解雇する予定で、ファースト社は、エム社の破産によって今後の売り上げが立たなくなるばかりか、エム社に対する貸付金約9億7700万円が回収できなくなる可能性がある。 さらにファースト社の商業登記簿を確認すると、代表の塚田直樹氏が12月1日付で死去していることがわかった。塚田直樹氏はエム社以外の複数の脱毛サロンの創業や運営にも関わっていたとされ、「銀座カラー」グループだけでなく、脱毛サロン業界へ及ぼす影響も懸念されている。