1週間後私は退院し、自分の自宅に帰った。

病院では久しぶりによく眠れたが、やはり、何もする事が無いのは暇であった。

学校や自宅から離れ、心理的に、落ち着くことが出来た気がする。

医者からは、頭部外傷の心配は無く、それよりも、食事摂取量の低下による低栄養状態と貧血を指摘された。

食事量は確かにここ数ヶ月減っていたと思われる。 
仕事量の増加、疲労、不安、不眠、いろいろ重なり、食事を作るのも億劫で、簡単に口に運べるお菓子ばかり食べていた。

戻って来て数日、隣は静かであった。

たまには買い物をして、キチンとしたものを食べようと近くのス〜パ〜に。

その帰り道、ある農業高校の前を通りかかると、数人の男子高校生が何やら輪になって叫び合っていた。

こういった子供達とは、関わっては行けないと、私はそう強く思った瞬間、驚くべき光景を目撃してしまった。

男子高校生が数人輪になり、中心にいる一人の男子生徒が自分の学校のバックを相手に大声で罵りながら蹴飛ばしたり殴ったりしている。

周囲はラジカセの大音響の音楽が流れている。

それに合わせて、烏骨鶏のように首を振りながらダンスする生徒や、大笑いをしている生徒がいる。

見た目は普通だが、行動が不良のようだ。
最近よくいる、高校生の典型だ。

ここから、私はかなり驚いてしまう。
その中心にいる男子高校生は、いきなりポケットからナイフを取り出し、かばんに対し「殺してやる」と叫びながらめった刺ししだした。

周りの高校生は、それを見て、はやしたてたりケタケタ笑ったりしている。

私は足早にそこを後にしようとしたが、転んでしまい、側の自転車が倒れ、買い物袋から果物が転げ落ちた。

それを、側を通った先程とは別の男子高校生が拾い、ニヤニヤとそれをボールのようにもてあそぶ。

「オラババア、俺のチャリンコどうしてくれんだよ。」

私が何も言わないのを見ると、ほらよと、私の後ろの男子生徒にもてあそんでいた果物を投げた。

「悔しかったらとってみろよ、クソババア。弁償代だせや。」
数名で私を取り囲み、数人がナイフをポケットからちらつかせた。

私はバックから防犯ベルを取り出し、目の前で引いた。大音響が響き渡り、私はありったけの声で
「助けて〜。殺される。」と叫んだ。

すると、近くを通りかかった高齢の女性が
「何してるの。警察を呼んだから。」
と、叫んでくれた。

高校生は逃げ、大音響の高校生達もいつの間にか居なくなっていた。




数日後、夜中にそれは起こった。

私が自宅で寝ていると、玄関の方から数人の歩く音が聞こえる。
ヒソヒソ声。
すると、隣のドアが空き、ガシャンと閉まる音がした。
また、何時もの騒音かと思った。

しかし、何時もとちがうのは、
ドカドカ歩く数人の足音がする事。
そして、バタンと何かが倒れる音がする事。

私はとっさに何時もと様子が違う事を察知した。

すると、突然女性のなんとも言えない
「ギャー。」と言う叫び声が真夜中に響き渡った。

それから、ドンドンと足をふみならす音がした。
加えて、数人の男性の噛み殺したクスクス笑う声がする。

ドンと音がする度に、女性の悲鳴とも呼べる、断末魔のような叫び声が、何度も何度も繰り返された。

こんな、人の叫び声は今まで耳にした事が無い。

再び、ものが割れる音、何かが床に倒れ込む音。

これは、普通じゃない。

私はとっさにバックを片手に、玄関から外に飛び出し、振り向きもせず裸足で外を走っていった。

続く