「忘れじの面影 (米1948 」 ★4

ジョーンフォンテーンの「片思い映画」

 

監督♀:マックス・オフュルス ドイツ生まれ・ユダヤ人

本名はマクシミリアン・オッペンハイマ-だが、ユダヤ人であることを隠すため 

   オフュルスという偽名にしたということです。   

舞台俳優~演出家~脚本家を経て、映画界へ。

   1931年、ドイツで映画監督デユー後、作品を残したが、

 ナチス台頭時1933年にフランスに亡命し、フランス国籍を取得。

 フランス映画、イタリア映画などを製作し、大戦中の1941年に渡米し、

戦後ハリウッドで本作を制作。 その後帰国したフランスでも映画製作。

1954年54歳、心臓病でハンブルグで死去。  

             (この監督の人生を知り、いたく感動します。)

        

             キャスト:ピアニストであるステファン(ルイ・ジュールダン)  

                彼を想う女性リザ(ジョーン・フォンテーン) 

                

    

   📖原作は♂ユダヤ人のシュテファン・ツヴァイクの1922年の中編小説  

 

『LETTER FROM AN UNKNOWN WOMAN』 素敵なタイトル
 

 


決闘に行く前のステファン(人気ピアニストだったが、今や荒んでいる)が、

執事から手渡された手紙を「おや?」と、読むところから始まる。

差出人は、見知らぬ女性だ。 のっけから、タイトルどおりなのよ上差し


その手紙を読みながらの回想で進んでいく本作、

ナレーションに導かれ、しじゅう流れるリストの🎹曲「ため息」のように 

流麗に物語が流れていく。

 

手紙を読みながら、次第に感情が揺れてくるステファンに心を重ねるか
彼をひたすら思い続けたリザに感情を重ねていくか
あるいは傍観者となるか、は見る人によって違ってくるかしらね。

・・・・・私は傍観者だったけれど、印象に残っている映画なのです。

 

裕福な男と結婚していたリザが、オペラの演奏会で、偶然、

かつて恋をしたステファンと出会わなければ
おそらく手紙を出すこともなかったでしょうし、
あのまま彼女は、自分と子供を愛してくれる夫と一生を送っただろう。   

 

再会によって、閉じ込めていた彼への思いが一気に噴出メラメラする。

それだけステファンを忘れられないから、初恋の人だから・・・・・

なのだけれど、
互いに愛し合っていた者同士の再会なら、焼けぼっくいに火が点くという     

こともあるやも知れぬが、

りザが、自分の過去と彼を、一方的に想うだけなのである。一途に!

さらにリザは「(今の)彼は私を必要としている」と思い込み、

夫に、彼の元に行く決心を伝える。これが凄いではないか!
愛する者への思い込みも、場合によっては、こうなると、怖い~。


私は夫婦のこの会話のシーンが一番好きだ。
夫は「どんな手を使っても阻止するぞ」と意思表明をするが、

リザはステファンに逢いに行く。
夫がどれだけリザとその息子をも愛し、裕福な生活をさせていようとも
「愛だけは買うことが出来ない」ということを、リザは夫の前に残酷にも

証明しちゃった。(夫は、ステファンに決闘を申し込むのだけれどね)
 

一方、ステファンはと言えば

「どこかで君と会ったような気がするが、思い出せない。話す必要がある」 

          
「昨晩から君の事をずっと考えていた。こんなに早く逢いに来てくれるとは」

名うてのプレイボーイのこの言葉が、リザにとってどれだけ残酷な事か。
リザは彼の言葉を本気にし、それを聞いて一瞬キラキラと目を輝かせ

嬉しそうな表情をみせる。口先だけで発したステファンの言葉なのに・・・。
 

「ああ、私を思い出してくれるかしら」と望みを持ってしまう。

 

     

 初恋の人が忘れられないリザの思いは強烈 

   

 👆当時30歳くらいのJ.フォンテ-ンだが、乙女の頃も演じている。

 

 

物語の時間軸としては

リーザが16歳の時、母と暮らす同じアパートに越してきたステファンに恋し

憧れたのが、そもそもの始まりだ。

 

その後、

ステファンと恋愛関係にあった時ですら、

2週間で帰ってくると言い残し、公演に出かけたまま帰って来ない男だ。

ステファンにとって、リザは「単なる彼女」で「一時の遊び」だった。

彼の子を身籠っていたリザは、ステファンが戻らぬ中、子供を産む。

それまでも、ステファンのプレイボーイぶりを見てきており、その時点で

彼がどういう男かを学んでいた筈と思いたいが、リザは違うドキドキ

 

その後、

子連れのリザは、裕福な男と結婚しており、

オペラの演奏会でステファンと偶然再会・・・・に話が繋がるわけです。
 

ステファンを忘れない、愛している。一方的に・・・。

リザが夫の反対を振り切り、彼の家を訪ねた時、
ステファンはリザを思い出すどころか、

恋の相手程度にしか思っていないことを知ったリザは

絶望して外へ飛び出す。 

(んもう、やっと解ったの!?と言っては、この物語が成立しないからあせる

 

「私を思い出して!私を思い出して!私よ!」という彼女の望みは、

見事に打ち砕かれた。 

 

手紙は、リーザの死後(病死)に、ステファンに届けられたのだ。
 

何であれほど ステファンに拘るのかな~と思わせるほど、

徹底的に悲恋物語を描いたわけだけれど、

映画として醸し出す雰囲気は決して悪くなく、画も美しい。

 

ステファンの執事が、「私はリーザを覚えてますよ」とステファンに示す

演出でラストが締まりましたね。

それでやっと気付くステファンって・・・・・。

そして、決闘へ向かうのです。


原作を書いたのは男性作家であることを、改めて思う。

 

★絨毯叩きの様子や、遊園地の列車の世界旅行(オルゴ-ル音と共に

選んだ旅行先の風景画が窓の外に移動する)の画が印象に残る。

 

 

私の映画備忘録より