「バルカン超特急 (原題 The Lady Vanishies) 1938」 ★4.7
(原作小説タイトルはThe Wheel Spins)
1938年というと ヒッチコックハリウッド進出前、イギリス時代最後の作品
・・・・ですが米国のMGMと共同制作
傑作です。私からは、本作に高得点を授与
1938年作で、この面白さ、よく出来た映画だな~と思う。
所謂「列車・密室サスペンス」映画としては、’はしり’ではないでしょうか。
サスペンスの基本が詰まって、ヒッチコックのセンスも素晴らしいおススメの一本です。
素敵な画を見つけ、貼らせていただきました。見知らぬ方、有難う!!
★話のはじまり
ロンドン行きの列車(大陸横断鉄道)が、雪崩の影響で立ち往生し、駅で足止めを喰った人達がワイワイガヤガヤ・・・。止むを得ず、架空の町のホテルに泊まるところから始まります。
この冒頭から、‘クリケット’に夢中な、お洒落な出で立ちのイギリス紳士の二人組みが面白くて笑いを誘ってくれます。
小さくてとても高級とは言えないホテルなのに、その男性二人組みはバリッとタキシードに着替え、とてもとても浮いてしまう食堂に降りていくなど・・・ユーモアたっぷりで・笑。
彼ら最後まで笑いを誘ってくれますが、イギリス人を揶揄している体ですけれどね。
★翌日、路線が開通し、列車が発車してから
老婦人フロイが忽然と消えてしまうところから、徐々にサスペンス色が濃くなっていきます。
若い女性アイリスが、老婦人が消えたことに気付いて騒ぎますが、乗客全員は「そんな人は乗っていなかった!」と口を揃えて言います。そんなバカな!から、話が動き出し、
列車の中では興味深い展開が次々に繰り広げられます。(それを書いては面白くないので省くとして。)
貨物車には、乗客として乗っているマジシャンが仕掛けで使う道具や動物が乗っていて(これ『インディ ジョーンズ 最後の聖戦』でリヴァーフェニックスが貨物車にかけ込んでからのシークエンスが浮かびます。この作品へのオマージュでしょう)
そこで起きるアクションは今見ると、とっても‘ゆったり目’の取っ組み合いなんですが、どこか懐かしい。
後半の銃撃戦でも・・・人が撃たれて死にますが・・・死ぬかもしれない緊迫した場面の筈がどこかのんびりしててほのぼの。つまり過激じゃないのね。
でも、それが映画評価のマイナスには決してならないです。
★激しくネタばれ「新鮮かつ斬新なネタ」
老婦人が消えるポイントは国家間レベルの問題が絡む問題であり、結構深いんです。
実はスパイである老婦人が‘メロディ(=曲で)’を暗号として国に持ち帰るのですが、観客はホテルの庭で演奏されるその曲を老婦人と一緒に聴かされていたというわけです。
ぼさっと、曲(メロディー)を聴いていたのではダメなんですねぇ
点と点が線になる瞬間に遭遇すると、ある種の満足感があり、サスペンス映画の醍醐味を味わいました。
私の映画備忘録【2006年01月】より &写真など追加
★追記 以前、気になったので調べていたこと★
原作は 作家 エセル・リナ・ホワイト(1876~1944)のサスペンス小説
「The Wheel Spins は1936年出版」 で、
ヒッチコックによる映画化で人気になり、映画タイトルの「The Lady Vanishes」も、小説の別名タイトルに加えるようになったと、何かで読みました。 ヒッチコックのお陰、良かったね~
はてさて、↑「バルカン超特急」は大好きなのですけれどね、同時代
で‘ミステリーの女王と言われたアガサクリスティ(1890~1976)’の長編小説
「オリエント急行の殺人」も、
列車・密室サスペンス・殺人あり、イギリスに向かうオリエント急行列車が大雪で立ち往生という点が類似していることが過ってずっと頭から離れず・・・スルーせずはっきり知りたい追求型の私は
出版時期を調べてみたら
「小説 オリエント急行の殺人は1934年出版 」なのでした。
アガサクリスティは、この作品の前には既に長編小説を多数書いており、「オリエント急行~」も話題作になっていたでしょう。小説「バルカン超特急」は二年後なんですね。
なるほど・・・・・興味深いことです。映画化はヒッチコックの「バルカン超特急」が先。
「オリエント急行の殺人」の映画化は、シドニー・ルメット監督により、1974年「オリエント急行殺人事件」として、キャストに錚々たる顔ぶれを揃えて製作されましたよね。
おわり