「淑女は何を忘れたか(1937」
監督:小津安二郎
脚本:伏見晃 小津安二郎(ジェームス槙)
71分。軽快でテンポ良い、ある家族を中心に巡るロマンティックコメディーというところ。
戦前の「モダンな香り漂う東京山の手の裕福な家庭環境」の画も、目にも楽しいわね。
小津のセンス、Nice !!! なかなかのヒット ★3~4
キャスト:斎藤達雄 桑野通子 栗島すみ子 佐野周二 飯田蝶子 上原謙 坂本武 突貫小僧
大学教授・ドクトル小宮(斎藤達雄)とその妻時子(栗島すみ子)の家に、姪っ子の節子(桑野通子)が泊まりに来てから、生き生きとした物語が展開していく。
ある意味ストーリーテラーのような中心的存在の、大阪弁の姪役・桑野通子が素晴らしい。
そして、家ではすべて奥さんに管理され、まるで言いなりの(平和のために、そのフリをしている)ドクトルこと斉藤達雄が、その顔とか体型とか物腰とか喋り方まですべてピッタリはまっていて、まあいい味出していること。対照的に家の中で君臨し、威張りまくりの妻役・栗島すみ子も典型的かかあ天下を好演。
桑野通子のヴィヴィドな女性像が良い。ドクトル小宮に向かって「おじ様が遠慮してるから、おば様がつけあがる。ガツンとやっちゃいなさいよ」っと焚きつける。さて小宮は、強くなっちゃうわけで、ここ一番で奥さんに平手打ちだもの 女の私からみてもスカッとしちゃうのだけれど、この後、妻の態度は一変し、夫婦は
ラブラブムードで物語は終わる
そこ笑うとこ
地球儀で遊びながらとんがらかっちゃダ~メよ
と歌う子供達もその歌も愉快で、顔がほころんでしまう。小津は子役の登場のさせ方が巧く、子供のシーンを決して無駄にしないのね
3人の「オバサン達」のやりとりも絶妙。 特に狐の襟巻をして現れる飯田蝶子(中央)の小技は抜群。
*桑野通子は桑野みゆきの母親。親子で女優さん。
*佐野周二は関口宏の父親。若い頃、かなり美男系だったのね。彼の晩年も若い人は生まれてない?
出てくる人、出てくる人、それぞれが持ち味を発揮していて、見ていて楽しくてアッという間だ。
豊かな生活環境で幸せそうに生きる人たち。そんな中で、多少のゴタゴタが起こるけれど、
貧しく困難な生活を強いられている人たちのことでもないので、結果的にコメディータッチで、終わってみれば、小津らしい小粋な作品なのね。
声をたてて笑ってしまうほど面白い場面があり、あれもこれも書きたくなってしまうけれど、この辺で止めておきましょうっと。
以上 私の映画備忘録【2013年2月・記】より P.S. 2021.5.4 ポスターなど追加
おわり