創業以来、常に新しい事業領域においてサービスを立ち上げ、業績を拡大している株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:藤田晋、東証一部上場:証券コード4751)は、2016年9月期第3四半期連結業績を発表いたしました。
今回は全47ページに渡る決算資料を、細かく紐解いていきます。
概要
連結利益を含む売上高としては、過去最高の764億円を記録。
対前年比でいえば33.2%増を記録するなど、数字面では絶好調なQとなった。
代表である藤田氏のコメントも「全体としては順調、一部好調」と、2017年に向けて着々と成長の歩みを進めている。
中でも注目すべきが、図中2段目のメディア事業。
“無料で楽しめるインターネットテレビ局”として展開している新たな動画配信事業
『AbemaTV』はオリジナルの生放送コンテンツや、ニュース、音楽、スポーツ、アニメなど、25チャンネルを24時間編成ですべて無料提供しており、2016年4月11日(月)の開局からわずか1週間で視聴数1日1,000万視聴を超え、それからおそよ3カ月月後の7月11日の時点で552万ダウンロードを突破するなど、急速に利用者数を伸ばしている。
そのAbemaTVに対する投資額は下半期までに90億と非常に強気の投資額となっている。
既に3Qのタイミングで34億の先行投資が行われており、好調な全体業績を受け、90億からもう一回り増額した投資も検討していると藤田氏は語る。
メディア事業のユーザー数を伸ばす一方、安定したキャピタルを確保している広告事業では動画広告とインフィード広告が牽引し、前年度比25.7%増となった。
ゲーム事業では2015年1Qのインパクトとなった『グランブルーファンタジー』に加え、本格スマホカードバトルゲームの『ShadowVerse』をリリース。
ゲームバランスの調整がツイッターのトレンドに載るなど、ユーザーからの注目度も非常に高く、ShadowVerseの出だしは非常に好調と言えるだろう。
※広告、ゲーム、メディアについては後述で詳細に記載していきます。
連結営業利益
連結営業利益のグラフではAbemaTVへの先行投資34億を除けば、グラブル有する2016年1Qに匹敵する営業利益を記録している。
販間費では、AbemaTVを含む初期投資費用、マスメディア広告の掲載費等が重なり、2015年4Qと並ぶ結果となった。
ここで注目すべきは図中紫色にハイライトされた人件費の項目だ。
新規事業&事業拡大に際して必然と伸びる人件費を2015年水準に抑え、投資に回せているのがグラフから見て取れる。
AbemaTVの共同出資社であるテレビ朝日社からの人材と、既存のサイバーエージェント社員の技術融合が効率的に行えていることが如実に表れている。
業績見通し
業績見通しについては、営業利益が既に3Qの段階で予定していた280億を超えた325億を達成。
売上高、純利益に関してはほぼトレンドに乗った形での着地となった。
これを受け、連結売上高を3000億円、連結営業利益を350億円へと上方修正を行う形となった。
インターネット広告事業
主軸である広告事業では、広告閑散期でもある4-6月だが、運用が始まったばかりのLine Ads Platformが好調な滑り出しを見せ、閑散期の下向きトレンドを上に押し上げる形で418億の着地となった。
動画広告では、Facebook,Youtube,Lineの三者が成長を後押し。
平行してAbemaTVの広告営業も開始したため4Qでは高い成長率が予想される。
広告主がAbemaTVに寄せる期待も一入であり、市場の期待に応えられるだけの結果がAbemaTVに求められている。
また、新旧入れ替わりの激しい広告技術を正確に把握し、先手先手で対応していくスピード感が成長の鍵を握っているだろう。
ゲーム事業
ゲーム事業では前述した、グランブルーファンタジーとShadowVerseが成長要素となり306億で着地。
広告費の比率がやや高い傾向にあるため4Qでは販間費項目に注意が必要だ。
大量生産がトレンドだった数年前から、より質の高いプロダクトを求められる時代になってきている2016年。
ユーザーのニーズの多様化、VRをはじめとする技術変化の両軸のバランス感覚が今後のスマホゲーム業界の10年を決めるといっても過言ではない。
7月22日の朝に公開された任天堂の申し子「Pokemon GO」が日本のスマホゲーム市場にどのようなインパクトを与え、それに対してサイバーエージェントのゲーム事業がどう対応していくか多くの市場関係者がその行方に期待している。
一方、巨人の一撃とは異なる形で成長する”白猫プロジェクト”有するコロプラは、提供開始時期の異なるアプリ群を「ミルフィーユ」のようにきれいに重ね合わせることで、積上型の売上モデルを実現し、企業全体としての持続可能性を高めている。
そのミルフィーユ型でいうとサイバーエージェントも同様に順々にヒット作を重ね、安定した利益の基盤を創造している。
スマホゲーム制作コストが高騰し、一本1億円以上かかると言われている昨今。
正確にバットに球をヒットさせていくためには緻密なユーザーニーズの分析と、タイミングが求められている。
サイバーエージェントでは、質の高いアプリが求められる市場に、2016年内に4タイトルのゲームを投入予定だ。
メディア事業
藤田氏が発表で幾度も口にした期待度の高いAbemaTV有するメディア事業。
本決済説明会でも、半分近い時間を割いて説明している。
営業利益では-34億円の先行投資が影響し、-31.1億の赤字で着地したメディア事業。
構図としては、新規メディアと既存アカウントのバランスの良かった過去Qに比べ大きく投資に振り切った形となっている。
営業利益の低下した既存事業に対して藤田氏は「なんとか売上利益を作っている」と含みを残した形で数字面の説明を終えた。
34億の投資を行ったAbemaTVは現座ダウンロード数552万DLを記録。
アプリのアイコンをタップするだけですぐ見ることができ、テレビのような受け身視聴でインターネットテレビを見ることができるUI/UXへのこだわりは、ユーザーのWAUが如実にその効果を数字に反映している。
7月16日にAbemaTVの番組表を5億円かけ、1000万部新聞の折り込みを行った関係で7/11週は大きくユーザー数が底上げされた。
またコアターゲットは「テレビを見なくなった若い層」と設定していたAbemaTVだが、ユーザー分布を見ると、狙い通り10代~30代のユーザーを囲い込むことに成功している。
ただし男女比に関しては、5:5が理想とし、夏に向けたコンテンツの拡大を行っていく予定だと語る。
ひとつの視聴習慣として、定着を目指すAbemaTVのコンテンツ展開には”定着”という意図が常に念頭に置かれていることを示唆している。
女性向けコンテンツの施策の一つとして、女性からの支持が熱い海外ドラマ、夏休みに向けたホラー特集など25のチャンネル数を活かした多様なユーザーへのアプローチを計画している。
マネタイズ候補としては、一つのマスメディアとして成り立つまでは、マネタイズの具体的なロードマップは考えていないとする藤田氏だが、今後はタイアップ広告、インフォマーシャル広告などのマスメディアで展開していた広告を導入していく予定だと語っている。
広告課金、ユーザー課金の7:3構想が実現した時、視聴者がどのような反応を示すか注目が集まる。
まとめ
総括としては、順調な広告事業/ゲーム事業のキャピタルを新規領域に投入し、拡大成長させていくビジョンを描いている。大きく売上高を伸ばした舞台裏には、前Qから積み重ねられてきた”先行投資”が見え隠れしている。
挑戦的な投資と、盤石な投資手法を用いたある意味手堅い手法で4Qを迎えていくことになるサイバーエージェント。
4Qの決済では投資先であるメディア事業がどのような変容を遂げ、私たちユーザーに価値を提供しているのか、非常に楽しみな3か月間である。


















